【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)14日(日本時間15日)=大塚仁】ヤンキースからFAとなっていた松井秀喜外野手(35)のエンゼルス移籍が、決定的となった。1年契約で年俸650万ドル(約5億5250万円)で基本合意した。代理人のアーン・テレム氏(55)も交渉が大詰めの段階と認た。メディカルチェックを済ませ、15日(同16日)にも正式発表する見通し。松井は7年在籍したヤ軍と別れを告げ、「外野手兼指名打者(DH)」として評価した西海岸の強豪を選んだ。

 日米が注目した松井の去就問題が、あわただしく動いた。この日、複数の米メディアが、松井とエンゼルスが契約で基本合意したことを伝えた。既にエ軍チームドクターのメディカルチェックをパスし、早ければ15日(同16日)に正式契約する。

 松井の代理人のテレム氏は「エンゼルスと真剣な交渉を行っている。ぎりぎりの議論をしているのは間違いない」とコメント。出来高の内容や通訳など付帯条件の話し合いが続いているようだが、交渉が最終段階であることは認めた。松井は現在、エ軍本拠地から近いロサンゼルス近郊で自主トレを続けているため、近日中に球団で入団発表が行われる見通しだ。

 地元紙によると、今季年俸1300万ドル(約11億500万円)から半額の年俸650万ドル(約5億5250万円)の1年契約。決して好条件とはいえないエ軍を選んだ理由は、まずその評価と熱意だった。松井は「自分に一番いいチームでできればいい」と話していた。エ軍ソーシア監督は松井に関し、「ヒデキは経験のあるバッターで才能は信頼できる。外野の守りもできると聞いている」と評価した。守備につきたい希望がある一方で、ひざ痛を抱えるだけに「DH兼外野手」を明確にしたエ軍と松井の思惑が一致。「DH兼代打」(キャッシュマンGM)の評価だったヤ軍とは対照的だった。

 松井の第1希望は残留だった。しかし低い評価に加え、いまだに正式オファーの動きを見せなかったヤ軍には見切りをつけた格好だ。世界不況の影響で、大リーグのFA市場の動きは遅く、契約が長引けば長引くほど、買いたたかれる。ヤ軍が用意していたとされる条件も年俸500万ドル(約4億2500万円)程度。本当にオファーを出すかの保証もなく、具体的にアプローチしてきたエ軍を選択した。

 今季エ軍はア・リーグ西地区で3年連続地区優勝したが、リーグ優勝決定シリーズでヤ軍に敗れた。攻撃力が課題だった上に、DHのゲレロがFAで退団が濃厚。1番を打つフィギンズもマリナーズへ移籍。打線強化が重要課題で、勝負強い松井の打撃は魅力だった。エースのラッキーもこの日、レッドソックスと基本合意し、両主力の流出で補強資金に余裕が出たのも追い風となった。本拠地が温暖な気候も、ひざ痛を抱える松井にはプラスに働く。

 今季の背番号「55」は若手右腕のオサリバン投手が背負ったが、松井に譲渡されるのが有力。ヤ軍は来年4月13日に本拠地開幕戦でワールドチャンピオンリングの贈呈式を行う。その相手はエ軍。松井は相手としてチャンピオンリングを受け取る。松井の2010年の目標は「打倒ヤンキース」へと切り替わった。