【ピオリア(米アリゾナ州)23日(日本時間24日)木崎英夫通信員】力を抜いたマリナーズ・イチロー外野手(36)が、メジャー10年目のスタートを切った。打撃練習では30スイングで2連発を含む5本の柵越え。最後のコンディショニングを終えるまでの約2時間半、動きは終始軽やかだった。

 「去年のシーズンを経て何となく新しい僕のスタートっていうか、ようやくその礎みたいなのができたっていう感覚を持ったんですけど。(今年は)初めて、(精神的な部分の)力を抜けるんじゃないかっていうような期待を持っています。これまでね、力入れっぱなしでしたから」。穏やかな表情で繰り出す言葉からは、昨年経験した苦境を乗り越えた自信がうかがえる。WBCでの重圧、胃潰瘍(かいよう)、左ふくらはぎ痛。16試合に欠場しても225安打を放ち、大リーグ史上初の9年連続200本安打を達成。この結果がこれまでにない気持ちの余裕を生んでいる。毎年、目標に掲げてきた200安打についても「去年のシーズンを考えればできないはずがないんですよ、そんなものは。できないはずがないものをわざわざ言うこともないし」とサラリと言う。

 メジャー10年目で目指すものについて聞かれ、こう言い切った。「数字とは別のところ。見てる人の気持ちが少し動いてくれたり、ハッとしてくれたりそういう瞬間が多いといいなぁっていう。でもそれは目的じゃなく結果として」。キャンプ初日、底知れぬ力を携えたイチローがいた。