<メッツ5-2ブレーブス>◇23日(日本時間24日)◇シティフィールド

 【ニューヨーク(米ニューヨーク州)23日(日本時間24日)=佐藤直子通信員】メッツ高橋尚成投手(35)がメジャー初勝利を飾った。ブレーブス戦で先発メーンの故障で4回2死一塁から緊急登板。宝刀シンカーに頼らず、スライダーを多投して3回を2安打1失点と好投し、窮地のチームを救った。メ軍救援陣としては97年リック・リード以来となる7奪三振もマークした。メーンが戦線離脱となれば、先発昇格の可能性が浮上した。

 まさかの初勝利を手にした高橋は、笑っていた。「1年間メジャーにいればいつか勝てると思ってましたけど、こんなに早くは」。突然の大役をこなし、胸をなで下ろしながら、実感がわいてくる。先発メーンが利き腕とは違う左ひじにけいれんを起こした。4回2死一塁。3回からキャッチボールをしていたが、ブルペンで捕手を座らせて1球を投げただけだった。

 巡り合わせに驚いた。対する打者は川上。3球三振に仕留め、リズムをつかんだ。直球とシンカーに頼り、3失点した前回21日とは別人だ。スライダーを織り交ぜながら、打者の狙いを絞らせない。2点リードの7回、プラードに適時打されて降板した際には、前回ブーイングを浴びたスタンドからスタンディングオベーション。「前回の反省を生かして、バラハスがうまくリードしてくれた。彼のおかげで抑えているところもある」と頼れる女房役へのねぎらいも忘れない。マニエル監督からは「最高の仕事をしてくれた」と絶賛された。負傷の右腕メーンが次回登板を回避した場合に「彼は候補になるだろう」(同監督)と、“限定”先発の可能性が出てきた。

 5回にメジャー初打席に立ち、同じ75年生まれの川上から左前打。初対戦した日本人打者が川上で、初安打を放った相手も川上だった。「明日憲伸にありがとうって言いたいと思います(笑い)。みんなに『イチロー』って呼ばれました」と照れた。初安打のボールは手元にあるが、ウイニングボールは守護神ロドリゲスから渡されていない…。

 巨人からFA宣言し、マイナー契約からはい上がった。メジャー契約の五十嵐とは、待遇の差を痛感した。キャンプ地の駐車場。メジャー枠の25人には決まった場所が背番号付きで用意されたが、自分にはなかった。結果を残すしかなかった。練習開始の90分前の午前8時には姿を見せ、誰もいないグラウンドでストレッチ、ランニングを繰り返した。オープン戦の遠征では、クラブハウス到着が真夜中になっても「オッサンだから次の日が大変」と、日付が変わってもケアを怠らなかった。

 中1日で計90球の過酷さをクリアしてみせた。今後は先発の可能性も出てきた。「先発の勝ちをいただいたっていうことだけ。もちろんうれしいですけど、先発の時と違う喜び。先発で勝ったら両手を上げてワーッと喜ぶと思います」。浮かれず騒がない。次なる目標=先発勝利に向けて早くも照準を合わせた。