<天皇賞・春>◇28日=京都◇G1◇4歳上◇芝3200メートル◇出走17頭

充実ぶりを見せつける、テーオーロイヤルの“横綱競馬”でした。好位でスッと折り合って早めに先頭。上がりは出走馬3位の35秒0。あの競馬をされては、後ろの馬は出番なしです。

直線抜け出し天皇賞・春を制したテーオーロイヤル(撮影・和賀正仁)
直線抜け出し天皇賞・春を制したテーオーロイヤル(撮影・和賀正仁)

芝3000メートル以上のレースは昨年末から4走連続でした。見る人によっては、長距離ばかりそんなに使って大丈夫か? と思われたかもしれませんが、成長期にある馬はどんどん強くなります。まして休養が長く、多かった馬ですので、6歳でも体は若い。飛行機や自動車の“勤続疲労”と同様に、使っていない分だけ体はフレッシュでした。

その馬体を見て、直前10Rのレース名にもなっていたライスシャワーを思い出しました。春の盾を2度制したライスは440~450キロの中型馬。ロイヤルは2キロ増の今回で460キロでした。現代の牡馬としては小さい部類ですが、マラソンランナーにスラッとした人が多いのと同じで、長丁場を走る馬は小さな体に、ものすごいスタミナを秘めているものです。

93年、天皇賞・春を制したライスシャワー(左)。右は2着メジロマックイーン
93年、天皇賞・春を制したライスシャワー(左)。右は2着メジロマックイーン

鞍上の菱田騎手はG1初制覇です。理由はさまざまとはいえ、何かあればすぐフリーになる時代にあって、デビューからずっと岡田厩舎に所属している姿を見ると、同騎手の根性、信念を感じます。自厩舎の馬で勝ちたい-。勝利インタビューの端々にもそれが表れていました。もちろん、ずっと見守ってきた師匠の岡田師も素晴らしいと思います。菱田騎手はまだ31歳。かつての武邦彦さんのように、30歳を過ぎてから大レースを次々と勝つようになった名手もいます。これからの騎乗が楽しみです。

2着ブローザホーンはあの後方からよく来ました。スローではなかったとはいえ、ペースは平均。我慢して末脚を引き出した菅原明騎手に拍手です。3着ディープボンドは今年も頑張りました。季節、舞台が合うのだと思いますし、本当に応援したくなる馬です。

一方、4歳のG1馬ドゥレッツァとタスティエーラは、どうしたのかと心配になるほど見せ場がありませんでした。次走以降に期待します。(JRA元調教師)

テーオーロイヤルで天皇賞・春を制し笑顔でガッツポーズする菱田騎手(撮影・白石智彦)
テーオーロイヤルで天皇賞・春を制し笑顔でガッツポーズする菱田騎手(撮影・白石智彦)