エンゼルスからFAとなった松井秀喜外野手(36)が17日(日本時間18日)、米国内で来季に向けて早くも始動した。強めのランニング、キャッチボールに加え、室内で約100スイングのトス打撃まで約2時間にわたって精力的なメニューをこなした。11月中旬という異例の早期始動であるばかりか、2月中旬の渡米までバットを握らなかった昨オフなどに比べると驚異的な早期の打ち始めとなった。移籍先が注目される中、メジャー9年目にかける意欲をみなぎらせて松井が動きだした。

 冬の訪れを前に松井は早くもバットを握った。ランニングとキャッチボールを終えると、室内の施設にこもって快音を響かせた。間合いを取りながら約100スイングのトス打撃。終了後には汗がしたたるほど、力のこもった打ち始めだった。来年のキャンプまでは3カ月、開幕までは4カ月半。表彰ウイークの大リーグがまだ今季の余韻に浸る中、スラッガー松井は来季に向けて動きだした。

 シーズン終了の10月3日からは休養に充てたとあって「なまりまくりだよ」と苦笑いする。だが練習の中身はハードだった。ランニングは50~60メートルの距離を10往復。顔をゆがめながらほぼ全力で走る姿は、今春キャンプのレベルを超えていた。「野球選手が野球の練習するのは当然でしょう。走って投げて打って、それだけだよ」。だが来季まで間があるこの時期に大リーガーが動き始め、しかも打撃まで行うのは決して「当然」ではなかった。

 復活にかける決意の表れだろう。ワールドシリーズMVPに輝いて迎えた昨オフは11月まで試合を行った影響もあり、渡米後の今年2月20日まで打撃練習を開始するに至らなかった。出遅れたという意識はなかったが、結果として5月に打率1割8分4厘の自己ワーストを記録するなど前半戦で苦しんだ。それがエンゼルスのV逸に響き、全日程終了後には「残念なシーズン」と振り返らざるを得なかった。早期の打撃開始にはその反省が見て取れる。今オフの練習コンセプトは「毎試合本塁打だよ」と言い切った。とにかく打つ、しかもシーズンを通じて、という覚悟がにじんだ。

 極めて良好なコンディションの表れでもある。手術明けの両ひざという不安を抱えたここ数年のオフは、ひざのケアがまず第一だった。ランニングがセーブされるだけでなく、ひざに負担のかかる打ち込みも控えざるを得なかった。だが今季、問題なくシーズンを乗り切ったことで不安は消えた。はやる気持ちを抑える必要もなかった。

 ホワイトソックス、アスレチックス、タイガースなどが獲得に関心を示しているが、「1カ月ぐらいかかるでしょ。何も聞いてない。おれは野球選手だから野球の練習をしてるだけ」とFA交渉は代理人に託している。来季どのユニホームを着ることになっても、野球人生をかけた1年になるのは間違いない。その大事なシーズンに照準を合わせ、松井が勢いよく走りだした。【大塚仁】