マリナーズ・イチロー外野手(37)がまた佑ちゃんをほめた。「一番びっくりしたのは握手です。ドキッとした。こうやって両手でぼくの手を握ったんですよ」。初対面の際に交わした握手が忘れられないようだ。そばにいた本紙記者の右手を握って、実演までしてみせた。

 プロでの実績のない日本ハムのドラフト1位斎藤佑樹投手(22=早大)がスーパースター、イチローと初対面したのだから、敬意を込めて両手で握手するのは、ある意味では当然だろう。しかし、イチローの受け止め方はちょっと違った。「初対面でこんな握手をすると、片方の手だけの握手になったときに“あいつもえらくなったな”って言われるじゃないですか。そういうものでしょ」。イチ流の表現で笑った。

 斎藤が「夢のようだった」と振り返った合同自主トレの打撃練習では、斎藤が打撃投手を務めた。その初対決はイチローにとっても有意義だったようだ。「それほど球速は出してないけれど、彼はランダムに投げてきて。次、スライダーです、とか言うのはなしでね。スライダーにチェンジアップ…フォークもいいコースに決まっていた。いいコントロールでしたよ」。実戦に近い内容で、多彩な変化球を操った技量。そして、遠慮なく自分自身の持ち味を発揮した22歳の冷静さを頼もしそうに振り返った。

 「なかなかあの雰囲気は出ない」「うれしいよね、ああいう野球選手が出てくると」と、楽しみにしていた初対面で、改めて評判通りの礼儀正しさを実感。「これが素なのかどうかは、ぼくにはわからない。意外に計算があるのかもしれない。そうであってほしいなとも思いますけどね」と笑った。さわやかなキャラクターを大事にしつつ、しぶとくずぶとく生き抜いていけ-。これもイチロー流のエールだった。