ヤクルトは18日、入札制度を利用してメジャー移籍を目指す青木宣親外野手(29)を落札した球団はブルワーズと発表した。17日に最高入札額は250万ドル(約1億8800万円)との通知を受け、同日中に受諾。大リーグ機構の正式発表前に公表するスピード手続きだった。29年ぶりの地区Vを飾ったブ軍だが、プリンス・フィルダー一塁手(27)のFA移籍が濃厚で、MVPに輝いたライアン・ブラウン外野手(28)は薬物疑惑により来季開幕から50試合出場停止の危機。窮地のチームが青木に救いの手を求めた格好だ。

 「無印」だったナ・リーグ中地区の強豪が、青木との独占交渉権を手に入れた。この日、衣笠球団社長から電話でブルワーズの落札を伝えられた青木は「素晴らしい球団に入札してもらって光栄です。住みやすい街で、球団の雰囲気もいいと聞いています」と喜んだ。偶然にも今週、マネジメント事務所が同じで、今季ブ軍に所属したダイヤモンドバックス斎藤と食事をする機会があり、チーム事情を把握。好印象を抱く球団の1つだった。

 ただブ軍の入札は意外だった。メジャーでも少数派となった極東担当スカウトを置かない球団の1つで、日本市場はほぼノーマーク。過去に日本選手への入札を報告された例はない。今オフもヤンキースが入札した西武中島への動きを報じられた際には、メルビンGMが「見たこともない選手に入札するのはトラブルのもと」と否定し、不快感を示したほど。そこには急を要する事情があった。

 今季MVPのブラウンに10日、ドーピング疑惑が浮上。プレーオフ期間中の検査で特定物質に高い値を示し、現在は大リーグ機構の最終判断を待っている。ただ異議申し立てで覆るケースは少なく、出場停止は避けられない状況だ。青木も「外野を守ることになれば、スーパースターと一緒にできるわけだから楽しみ」と胸を躍らせる主砲は、来季開幕から2カ月間も離脱の危機にある。

 いわば青木は、MVPプレーヤーの「代役」指名を受けたに等しい。また一塁はFAフィルダーの穴があいており、青木に右翼適性も認められれば、入団時は一塁手だった右翼ハートのコンバートも可能。攻撃オーダーのオプションは増える。青木は「今後のことは代理人に任せて、自分は練習に集中します。キャンプが短いので、ちょっと早く仕上げていきたい」と今後も神宮球場を拠点に、調整ペースを上げたいとした。