【ピオリア(米アリゾナ州)18日(日本時間19日)=四竈衛、木崎英夫通信員】マリナーズ・イチロー外野手(38)が、キャンプ初日に2012年型の打撃フォームを披露した。右足をほとんど上げず、フォロースルーを大きく取る、大胆な改良に取り組む考えを自ら明かした。昨季は200安打が10年連続で、打率3割も途切れた。今季は打順が3番になる可能性も高く、新打法でメジャー12年目に臨む。

 心に秘めた、今季への思いを示すかのようなイチローのキャンプ初日だった。フリー打撃では、バットを寝かせ、ほとんど右足を上げない「2012年型打法」で52スイング。6本の柵越えでお披露目を終えた。練習後の会見では、改造の目的など詳細について、「ここでお伝えすることではないですね」とサラリとかわした。もっとも、数々の大記録を残してきたイチローが、日米通算21年目を迎えて大胆な改良に踏み切ることは簡単ではない。

 イチロー

 スイングの仕方なんて変えられないですから。考え方としては、ある動きを省いているということですね。試合ではどうなるかは分からないと思ってますけどね。練習の形とはどうしても変わるので。現時点では、ということですね。

 記録の呪縛から解放された昨年オフ、新打法に挑む決意を固めた。しかも、今季は首脳陣が「3番イチロー」構想を進めており、打線の中での役割も変わる可能性が高い。体重移動を減らし、フォローを大きくとる新打法は、それだけの体力的裏付けがないとできない。決断は、自分の体と年齢に対する挑戦のようでもある。「自分がやりたいようにやるということ。自分のセンスを信じるということですかね」と、いつも通り淡々と答えた。

 その一方で、グラウンド内では、気心の知れた川崎宗則内野手(30)と笑顔で話す光景が何度も見られた。「アイツはどこでも生きていけるね。見てるだけでおもろいですからね」。また、ロッカー室では取材される岩隈に「チェ~ス」と突っ込みを入れるなど、例年になくリラックスした表情も垣間見えた。

 記録との闘いにひと区切りが付き、技術的にも新たな境地を見据える12年。ともに09年WBCを戦った川崎、岩隈の新同僚も加わり、しかも日本で公式戦がスタートする。「3人で開幕にグラウンドに立ちたいと思っています」とサラリと言った。口元をキリリと引き締め、メジャー12年目が始まった。