<ア地区シリーズ:レイズ1-3レッドソックス>◇8日(日本時間9日)◇第4戦◇トロピカーナフィールド

 上原が、再び「胴上げ投手」になった。レッドソックスがレイズを下し、3勝1敗で5年ぶりのリーグ優勝決定シリーズ進出を決めた。前日の第3戦でサヨナラ弾を浴びた上原浩治投手(38)は、1点リードの8回裏2死から救援し、打者4人を完璧に封じて締めくくった。12日(同13日)から始まる同シリーズでは、ワールドシリーズ進出をかけて「アスレチックス-タイガース」の勝者と対戦する。

 体はスマートでも、心はたくましかった。巨体の捕手ロスに軽々と抱きかかえられた上原は、グラウンドの中心で右手を宙にかざした。2点リードで迎えた9回裏。最後は4番ロンゴリアを、フォークで空振り三振に仕留めて、試合巧者レイズを振り切った。「勝ちたい、その気持ちだけですよ」と興奮を抑えるように言った。ベンチから託された8回裏2死からの「4アウト」を完璧に奪って、チームを歓喜の瞬間へ導いた。

 前夜の第3戦後は、しばし失意の中にいた。9回裏2死からサヨナラ被弾。シリーズ全体の流れが変わりかねない黒星だった。ただ、分析や反省はしても、この1年間、球界屈指の投球を続けてきた右腕がうつむくことはなかった。レンジャーズ時代の2011年、プレーオフで3戦連続被弾した際は、心身ともにうまく切り替えられず、悪循環にはまった。今は違う。「過去のことは過去のこと。引きずっても仕方ないですから。それよりも今日、明日を見た方が人生楽しいじゃないですか」。磨き抜かれた技術と、一切の妥協を許さない体調管理の裏付けがあるからこそ、1つの黒星ぐらいで心が揺らぐことはなかった。

 一夜明けたこの日、球場入りすると、いつもと変わらず、チームメートが次々に声をかけてきた。「それはすごく助かりました」。全体練習開始前には、ブルペンで長男一真(かずま)君(7)の投球練習を受けるなど、敗戦を引きずるどころか、むしろリラックスしながら試合に備えた。

 地区優勝に続く「胴上げ投手」として、試合後のクラブハウスでは、手荒いシャンパンの泡を浴びた。自身初の世界一までに、最大14試合、2回のシャンパンファイトが必要。「前を見てやるだけですから」。頂点までの試合が続く限り、1つの関門を越えても余韻に浸り続けることはない。【四竃衛】

 ◆上原の巨人時代にあった“雨のち晴れ”

 抑えを務めた07年9月7日の阪神戦(東京ドーム)で、8-8の9回に桧山に決勝被弾。さらに2日後の同戦では延長10回に鳥谷に決勝適時打を浴び、2戦連続で敗戦投手となった。次戦となった同11日のヤクルト戦(神宮)では9回から登板し、3安打を浴びるなど1点を失ったが、2者連続三振で締めてセーブを挙げた。