イチロー節で熱く語った。マーリンズと正式契約を結んだイチロー外野手(41=前ヤンキース)が29日、都内のホテルで入団会見を行い、メジャー15年目の思いを語った。年俸200万ドル(約2億4000万円)の1年契約で、背番号はオリックス、マリナーズ時代と同じ「51」に決まった。会見にはサムソン球団社長、ジェニングズGMら球団幹部が同席。約160人の報道陣と20台を超えるテレビカメラの前で、真新しいユニホーム姿を披露した。

 右隣に球団社長、左には運営責任者とGM。日本とは思えない豪華な顔ぶれに、イチローがマーリンズを選んだ理由が表れていた。「球団のやたら熱い思いが伝わってきて、この思いに応えたいと思った。僕がこの2年間欲してきたのは、これだったんじゃないかな」。約1万2000キロ離れたマイアミから18時間かけて、会見のために球団幹部が足を運んだ。「選手として必要としてもらえる。何より大切で、大きな原動力になる」。緊張か何度も紅茶を飲みながら、ひと言ひと言に感謝を織り込んだ。

 マリナーズ入りした00年以来、15年ぶりの日本での入団会見。当時27歳だった青年は不惑を超えて41歳になった。現時点でメジャー最年長野手となるが、ネックとは思っていない。「人間として成熟する前に現役を退くのはつらい。40過ぎて現役というのは重要なこと」。自身初のナ・リーグ、球団初の日本選手と、なお挑戦を続ける。「こんなこと若いうちしかできない。平均寿命までまだ39年くらいあるからね」。笑い飛ばした。

 代名詞の背番号「51」のユニホームに袖を通すと、自然と笑みがこぼれた。ヤンキース時代は「31」。当時最初に書いたサインに、うっかり51と記したことを思い出した。「これは僕の本能。それくらい僕の手は51を覚えている。無意識で51と書けることが、すごくうれしい」と喜んだ。

 再びプレーの場を得たレジェンドには、いや応なしにマイルストーン(偉業)への期待が高まる。米殿堂入りの基準の1つと言われるメジャー通算3000安打には、あと156本。「数字がすべてではない」と言ったが、同時に「これがなくては現役を続けられない」とも言った。数多く打席に立つためには、メジャー屈指のマ軍外野陣から出場機会を奪わねばならない。

 現状では、外野手で控えの4番手。ただ、ヤ軍でも5番手だった。「4番目というのは想定内。3番目までは、特にアメリカでは40歳という年齢でカットされる。4番目なら何の問題もない」。即レギュラーでなくとも、出れば打てるし、守れる。自信がにじみ出ていた。

 日米のファンも変わらず声援を送るだろう。「これからも、応援よろしくお願いします」。終了かと思ったら、こう続けた。「…とは僕は絶対言いません。応援していただけるような選手であるために、自分がやらなくてはいけないことを続けていく。ということをお約束します」。イチローがイチローたるゆえんが、垣間見えた。【鎌田良美】<イチローの入団会見>

 ◆オリックス

 91年12月18日、ドラフト4位の鈴木一朗は投手として入団会見に臨む。

 ◆マリナーズ

 00年11月19日、マ軍の筆頭オーナー山内溥氏が社長を務める任天堂本社(京都市)で会見。ユニホームに袖を通すと「じゃーん!」と声を上げ、クルリと1回転して背番号51を披露。緊張から「マリナーズの一員でプレーできることを非常に光栄に思っていますし…、光栄に思っていますし…、光栄に思っています」と珍しく言葉に詰まった。

 ◆ヤンキース

 12年7月23日、マリナーズ-ヤンキース3連戦開始の3時間前、マイナー2投手との交換トレードが決まり、マ軍本拠地セーフコフィールドで緊急会見。移籍を志願していたと明かした。ヤ軍では背番号31となり、8番右翼で出場した試合では4打数1安打1盗塁。