中日ドラフト6位井領雅貴外野手(25=JX-ENEOS)が今度は守備で見せた。「3番左翼」で先発。2回に先制点を防ぐダイビング捕球。8回には右翼から本塁にストライク返球で三塁走者を刺した。前日21日の三塁打2本など打撃を買われているが、守備力もアピール。ミス連発で完敗した中、ドラ6ルーキーはキラリと光った。

 どこまでも冷静だった。8回無死一、三塁。伊藤隼の飛球が右翼に飛んできた。三塁走者の阪神荒木はタッチアップ態勢。だが、上空を見つめる井領の視界には一塁走者柴田の動きが入っていた。

 「一塁走者が(塁間の)ハーフまで出ていたのが見えたので、少し送球が高くなっても、一塁走者は(送球間に)二塁には行けないと思いました」

 カットマンをはさめば一塁走者を釘付けにできるが、その必要はないと瞬時に判断した。ノーカットのワンバウンド送球を選択し、見事にストライク。微妙なタイミングだったが松井雅のタッチもうまく、回り込んだ荒木を仕留めた。「守備はもともとはあまり得意ではない」との自己評価が信じ難い、ハイレベルなプレーだった。

 2回無死一塁では江越の左中間への打球を追い、倒れ込みながらキャッチした。強い逆風が吹く難しい打球。抜けていれば先制点を許していた。阪神の飯田スコアラーは「あれを捕ったのは大したもの。走攻守そろっているし、1軍で出ても全然不思議ではない選手」と舌を巻いた。

 21日ロッテ戦で三塁打2本。この日も打線が沈黙する中、新人では唯一の安打をマークした。8回に二神から中前へクリーンヒット。これで実戦は5試合連続安打だ。「打」「走」のアピールは上々だったが、守備力にも目を向けさせている。シート打撃と練習試合で2度、フェンス際で滑り込み捕球していた。上田外野守備走塁コーチと連日、特守を行い、捕球と送球の正確性を高めてきた。

 谷繁兼任監督は「必死に一瞬一瞬、1球1球をやっている」と目を細める。右翼レギュラー最有力の平田は高い守備力を誇るが、井領も十分、1軍で勝負できるレベルにあると証明した。キャンプ終盤に入り、ドラフト6位のダークホースが赤丸急上昇中だ。【柏原誠】

 ◆井領雅貴(いりょう・まさたか)1989年(平元)11月4日、千葉県生まれ。桐蔭学園-JX-ENEOS。昨秋ドラフト6位指名。打撃は勝負強さもあり、今キャンプのシート打撃を視察した巨人スコアラーに「失礼しました」と無警戒だったことを撤回させた。遠投110メートル。174センチ、82キロ、右投げ左打ち。