野球と学問の両立へ、試練の雨となった。ロッテは26日、宮崎で予定していたオリックスとの練習試合が雨で中止。ドラフト2位の田中英祐投手(22=京大)はプロ2度目の登板が流れた。卒業論文発表のため、3月4日から3日間、チームを離れる。そのため、次回登板は未定となった。目指す開幕1軍へ、正念場となった。

 雨は前夜から降り続いていた。宮崎市内の宿舎で朝食を取っていた午前7時半。早々と中止の一報が届き、田中は「投げたかったです」と残念がった。自身2度目のプロのマウンドとなるはずだった。開幕1軍生き残りへ向けた重要な“テスト”がお流れとなった。

 雨天中止自体はよくあることだ。ただ、田中の場合は事情が異なる。京大工学部で卒業論文「水和構造の逆計算理論」を発表するため、3月4~6日の間はチームを離れることが決まっている。卒論の提出期限は同20日だが、先に教授の前で発表し「合格」をもらわないといけない。これも理系学部の大変なところ。1軍本隊はこの日、中日戦を行う名古屋へ移動した。石川、涌井ら開幕投手候補が控えているため、田中が中日戦で投げる“枠”はなかった。本隊を離れて帰京し、京大に出向くまで、埼玉・浦和の2軍球場で練習する。

 次の登板は決まっていない。チームに再合流するのは3月7日。落合投手コーチは「合流して、調整させ、どこで投げるかを決めます」と話した。広島相手に2回3安打無失点だった前回2月22日の初登板から、少なくとも2週間は間隔があくことになる。

 開幕まで1カ月を切るタイミングでチームを離れることに、田中自身「抜けるのは痛いです」と認めた。調整への影響は否めない。だが「卒業するのも大事」と恨み節はなかった。京都滞在中も、可能な限り体を動かす。「結果を残していったら、1軍もあると思ってやっています。次、投げる時に結果を出したい」と前向きに言った。史上初の京大出身プロ。人にはない苦労がある。【古川真弥】