仕切り直しの松山で暴れるしかない。ヤクルト-広島4回戦は降雨のため2回裏終了時、午後7時19分にノーゲームが宣告された。広島新井貴浩内野手(38)はヤクルト成瀬用オーダーとして「5番一塁」で先発も、無安打だった。今日15日は今季、最初で最後の松山での試合。相性もよく、思い出が詰まった地で勝負強さを発揮する。
13分の中断を経て、川口球審がノーゲームを宣告した。今季2試合組まれている松山での試合。赤の雨がっぱで染まっていたスタンドからは、ため息が漏れた。残念がったのはファンだけではなかった。楽しみにしていた男がいた。試合開始の約2時間前、広島新井は報道陣に天候を逆質問していた。
「大丈夫なん? 雨雲。でっかいの来とる? やれそうなん? 本当にやってほしいんよ」
新井は松山が大好きだ。通算14試合に出場し、52打数19安打で打率3割6分5厘、2本塁打。「雰囲気が好きだし、個人的にもいいイメージがある」と話すように、打ちまくっている。レギュラーシーズンでも好成績だが、新井には忘れられない試合がある。遠くを見つめるようにしながら、思い出の試合を語った。
13年前の02年7月13日。新井は初めて球宴に選出され、松山を訪れた。7回、日本ハム隼人から左翼席へこの試合唯一の本塁打を放った。逆風を切り裂くいきなりの1発で、新人賞と優秀選手賞を受賞。なにより3日前に他界していた先代の松田耕平オーナー(享年80)にささげる一打となった。特別な試合として、記憶に残っている。
「左肩に喪章を着けてプレーしてね。ホームランを打った。それは記憶に鮮明に残っている」
「5番一塁」でスタメン出場したこの日は1回2死一、二塁の好機で凡退。だが、それを雨が取り消してくれたのも不思議な縁かもしれない。今日15日のヤクルト先発は右腕石山とあってスタメン出場するかは微妙だが、いずれにせよ勝負どころで打席は回ってくる。それが新井という男であり、松山との縁でもある。
「中止? こればっかりは仕方ない。明日また、いつも通りしっかり準備して望みたい」。そう言い残し、帰りのバスへと乗り込んだ。松山での試合は今日が今季最後となる。「そのとき」に備え、新井は最高の準備で試合に臨む。【池本泰尚】



