巨人菅野智之投手(25)が、マエケンに「スミ1返し」を決めた。広島前田健太投手(27)との今季2度目の投げ合いを8回無失点で制して3勝目をマーク。9日の対戦では初回の1失点が決勝点となり、8回を完投したが7回無失点の前田に屈した。球界屈指のエースの熱投に呼応するように、約1年半ぶりの2ケタ三振も記録。リベンジに成功し、チームを3連勝にも導いた。

 菅野は1点もやるつもりはなかった。1-0の8回。左翼手アンダーソンの失策で、無死三塁のピンチを招いた。同点まではOKと考えてもおかしくない。だが、菅野は違った。「全部三振を取るつもりで投げました」。田中は144キロ直球で空振り三振。四球を挟み、代打小窪はフォークで空を切らせた。安部には三遊間にはじき返されたが、坂本がファインプレー。無失点で切り抜けると、珍しく両手を突き上げた。広島のエース前田との投手戦に勝利し「チームが勝って良かった」とほほ笑んだ。

 マエケンには特別な意識を持つ。「セ・リーグで一番いい投手ですし、意識してマウンドに上がる」と、敬意とライバル心を秘める。9日の今季初対戦では、慎重に入りすぎた初回で1失点。2回以降は抑えたが、0-1の完投負けを喫した。「(前田は)その辺のピッチャーとは違う。向こうがゼロなら、ゼロで抑えるのが僕の仕事」。前田に投げ勝つには、1点が命取りになると思い知った。

 隙を見せないよう、表情を変えずに淡々と投げ込んだ。「前回はああいう負け方をして悔しかった。絶対に勝ってやろうと強い気持ちで投げました。長い回を投げようと感情を抑えて行きました」。闘志むき出しで来る前田の執念にも「打席に立っていても、もう1点もやらないというのを感じた」と刺激を受けた。

 約1年半ぶりの2ケタ奪三振(10個)は、全て空振り三振。直球主体の速球派のスタイルを変え「今日は直球とフォークが軸でした」と打者によって変化球を軸球に据え、打者に絞らせなかったのも効いた。だが、投手戦で互いに高め合ったことで、菅野の能力が引き出されていた。完投こそ逃したが、原監督も「8回も冷静に投げていた。1球1球、慎重に投げた。精神力の強さを感じる」と目を細めた。

 リベンジに成功したが、満足はしていない。「次は前田さんが(今日の)僕と同じ気持ちで出てくるでしょう。迎え撃てるように準備したい」。マエケンとの名勝負を見据え、引き締めた。【浜本卓也】

 ▼巨人が初回の1点を守って勝利。巨人の1-0勝利は14年9月4日広島戦以来で、前回も宇都宮の清原球場。これで同球場では2年連続1-0勝利を含む4勝1分けとなった。初回の1点だけで勝った巨人のスミ1勝利は、江藤の本塁打で河原が完封した00年7月30日中日戦以来、15年ぶり。菅野と前田の先発対決は4月9日に次いで今季2度目だったが、9日はスミ1で菅野が敗戦投手。同一シーズンのスミ1試合で勝利と敗戦の両方を記録した巨人投手は73年高橋一以来。

 ◆菅野対前田 公式戦では今回が通算5度目の先発対決。これで互いに2勝2敗となった。前回9日の対戦では広島が1回無死一、三塁から丸の二ゴロで1点を挙げ、前田-中崎-ヒースの完封リレーだった。

 ◆スミ1 1回表、あるいは1回裏に1点が入り、そのまま1-0で試合が終了すること。スコアボードの左「隅」に1点が入ることが語源で、2回以降に1点が入った1-0の試合では、原則として使わない。1点を守る側の重圧が回を追うごとに大きくなり、スミ1勝利は非常に難しいとされる。