気迫の救援が今季初のサヨナラ勝ちを呼んだ。日本ハムの道産子右腕、鍵谷陽平投手(24)が、1-1の同点で迎えた9回1死三塁の大ピンチに、カラバイヨ、竹原の打者2人を完璧に封じた。その裏のサヨナラ勝利を導き、今季初勝利。開幕から走者を置いた場面では打者14人連続で抑え続けるリリーフが、地元を大きく沸かせ、チームを勢いづかせた。

 大きく口を開けながら、勢いよく前にかがんだ。鍵谷が鋭くサインをのぞき込む。9回2死三塁。5番竹原をカウント2-2と追い込んだ。フォークの要求に首を2度振った。「フォークを合わせられるより、真っすぐで空振りをとろうと」。我を通した。自慢の直球をウイニングショットに決めた。「首を振って投げましたし、責任を持って投げないと。コンちゃん(近藤の愛称)も自分も後悔しないように」。魂のこもった151キロで空振り三振。雄たけびを上げ、右拳で豪快なガッツポーズで「鍵谷の7球」を締めた。

 道産子右腕の熱投が、札幌ドームで今季初のサヨナラ勝利の歓喜を呼び込んだ。ピンチを背負った3番手の宮西からバトンを受け取った。1死三塁での出番。「外野フライもダメな状況。低めだけを意識した。(宮西には)いつも助けられてばっかなので」。熱い思いも乗せた7球が、苦境で光り輝いた。

 苦悩の末にセットアッパーへの道を切り開いた。2年目の昨季は開幕を2軍で迎えた。どん底にいた。投球フォームを見失っていた。「何か分からないんですけれど、体に力が入らないような感じがある」。原因が分からず、もがいた。はい上がるきっかけは地道な反復練習だった。中垣トレーニングコーチから正しい体重移動について教わった。ネットスローを繰り返し、体に染みこませる日々。居残り練習も黙々と行うひたむきさが、昨季終盤の活躍の下地だった。

 3年目の今季は、あえて「スロー調整」だった。「(昨季は)飛ばし過ぎたので、あえて落としています」。1年前は本格ブレークに意気込みすぎ、キャンプ中からブルペンでの球数もかさんだ。結果は開幕前に失速。迷宮をさまよった起点を冷静に分析し、首脳陣とも相談した上でシーズンを見据えた調整に挑んだ。

 チームも大事に「秘密兵器」として温めた。開幕前は同一リーグとの対戦を避けさせた。すべては公式戦で能力を爆発させるためだった。栗山監督も「素晴らしかった。自信にしてほしい」と、たたえる。成長著しい北海道生まれの剛腕が、劇的な幕切れで5カードぶり初戦白星の立役者となった。【木下大輔】

 ▼日本ハム鍵谷が9回1死三塁から打者2人を封じ、今季は走者を置いた場面で1人も走者を許していない。走者なしの場面では被打率5割だが、走者を置く場面では計14人を完璧に封じている。札幌ドームでは今季4試合無失点で、昨年4月27日ロッテ戦から10試合連続無失点となった。