勝利を祝うジェット風船が、楽天戸村健次投手(27)に実感をもたらした。「ああ、勝ったんだな」。勝利の瞬間にマウンドにいたのは初めて。グラブをポンとたたき、握った右拳を横に振って、プロ初完投勝利を喜んだ。

 過去5年間で21個ものストレートの四球を与えてきた。制球力が課題と言われてきたが、今季はストレートの四球を1つも出していない。腕の振りを少し下げたことが奏功した。変化球に角度がついた。打者にとって打ちづらい球になった。球数と無駄な四球が格段に減った。

 2人の大先輩が助言をくれた。マリナーズ岩隈からは「自分の調子の中で対打者を考えた方がいい」と言われた。「外角低めにビタッと投げたいと思っていたのが、逆球のストライクでもいいと思えるようになった」。レッドソックス上原には、知人を介し映像を見てもらえる機会を得た。数日後、電話で、下半身の使い方と骨盤の意識などの助言をもらった。低めへの制球力アップに生きた。

 「去年1年間、何もできなかった。今年1年、必死こいて頑張ろうという強いものは持っている」と、闘志を燃やす。ローテーション6枚目の男が、頼りになる存在になりつつある。【竹内智信】