最下位危機で阪神能見篤史投手(35)が快投だ。負ければ6位転落だった広島戦で、先発能見が9回6安打の完封勝利の2勝目。無四球でのシャットアウトは自身2年ぶりで、今季チーム一番乗りの完封。巧みな投球で6奪三振。チームは明日28日から首位ヤクルトとの甲子園3連戦。さあ、お見事投球での白星に乗っていくで~。

 0が並ぶスコアボードを背に、真っ白な歯が輝いた。110球を投げ終えると、阪神能見はマウンド上で喜びを分かち合った。

 「広島打線は勝負が早い。そのへんは藤井さんが打者を見ながらいろいろやってくれた。自分のできることをしっかりとやっていこうと思っていた」

 そう振り返ったのは、5回2死二塁の場面だ。6回に大量6点の援護を受ける直前。広島に流れを渡さない、鮮やかなシーンを演じてみせた。広島ベンチが石原に代え、代打に会沢を送ってきた。さらに次打者には小窪が準備していた。会沢には昨年本塁打を許している。勝負を避けてもおかしくない場面だが、過去広島戦18勝のコイ料理名人は、最大のピンチにもひるまない。打ち気を利用するかのように、チェンジアップ4連投でカウントを2-2に整えた。決め球は一転、内角直球。145キロの球にバットは動かず。見逃し三振で猛攻への下地をつくりあげた。

 多くの期待に応える0行進でもあった。片山ブルペン捕手から「完全試合をしてこいよ」と送り出された。能見の答えは「してきます」。被安打6本すべてが単打。三塁は1度も踏ませなかった。無四球完封は、13年4月9日巨人戦(甲子園)以来、747日ぶり。大記録ではなかったが、まさに快投だった。1週間前の登板順から藤浪と入れ替わり、この日を迎えていた。中7日調整で、21歳右腕にカード初戦を譲る形となっていた。前回登板は中10日の間隔があった上での勝利だった。異例ローテで復調への道を探った首脳陣に、完封一番乗りでの自身連勝という結果で応えてみせた。

 負ければ、最下位転落の危機を救った。チームは前日25日に、広島打線の11点の猛攻を食らっての敗戦だったが、左腕がその勢いを食い止める完封劇。和田監督は「乗り切れない中でスカッと勝つには投手が完封して、点を取って。今日も6点取るまで非常に苦しい展開だった。こういう勝ち方は今までなかった。何とかキッカケにしていきたい」とたたえた。借金はまだ4あって、8カード連続勝ち越しなしと苦境には違いないが、指揮官もこれまでの流れとの違いを感じ取る。35歳左腕の挙げた白星こそ、逆襲の幕開けにふさわしい。【宮崎えり子】

 ▼阪神能見が今季4試合目の登板で初完封勝利を挙げた。6安打無四球。完封は14年4月12日巨人戦(甲子園)以来で、27試合ぶりとなった。完封勝利は自身9度目。無四球のシャットアウトは13年4月9日巨人戦(甲子園)以来3度目。