広島菊池涼介内野手(25)のフルスイングから放たれた1発がケリをつけた。白球が左翼席に消えると球場が大歓声に包まれる。ヤクルトの応援をまねて配布されていた赤い傘が突き上げられた。

 ここまで6戦6敗の延長戦。10回も2死で走者なしだった。菊池は初球をファウル。「初球をブーンと振れたのは久しぶりだった。懐かしい感じ。昨年は調子が悪くても振っていたので」。持ち味を思い出した。昨季は好不調に関係なく、思い切りバットを振り、打率3割を残した。1球ボールを挟み、3球目。真っすぐに体が反応した。振り抜いたバットから4年目で初のサヨナラ弾が生まれた。

 3日ヤクルト戦で頭部への死球を受け、首にはまだ痛みが残る。前日の全体練習は休養が与えられたが、返上して体を動かした。昨秋、監督に就任したばかりの緒方監督から丸とともにチームリーダーに指名された自覚の表れでもあった。

 打線のリーダーである4番のバットもチームを勢いづけた。4回、新井が左翼席へ先制ソロ。今年1月に言った「4番で黒田さんが投げる試合に本塁打を打つ」という夢が、43試合目に実現。満身創痍(そうい)の2人のアーチが勝利につながった。

 お立ち台に上がった菊池は「これをきっかけに上がっていけたら」と力強く言った。4日巨人戦のサヨナラ勝ちから6連勝した再現を誓った。【前原淳】