カープ女子見たか! 中日藤井淳志外野手(34)が延長12回2死、4号2ランのサヨナラ弾を描いた。3回の山井の危険球退場で荒れ模様かと思われたが、両軍とも延々とスコアレス。12回までもつれた熱戦に終止符を打った。女性客に特製ユニホームが配布され、ピンクに染められたナゴヤドームを粋に盛り上げた。

 役者然と両手を優雅に広げ、ゆっくりダイヤモンドを回った。笑いを取りながら本塁に飛び込んだヒーローはお立ち台でも絶好調。「今日はいつもより球場の匂いがいい匂いだったので集中力が高まりました」。女性を意識したリップサービスで沸かせた。

 相手は広島。広島といえばカープ女子。女性向けのアクションでは出遅れていたドラゴンズが女子力? でカープを圧倒した。「ドラ恋! ガールズデー」と銘打たれ、女性来場者全員にピンクの特製ユニホームが約2万枚配られた。カープの赤もピンクに取り込まれ、ドーム内が非日常な雰囲気に包まれた。

 ただ試合の方は、女性のビギナー客が楽しみにくい試合だったかもしれない。点が入りそうで入らない、じれた展開。それでも12回の攻防は初めて球場に来た人でもシビれたはずだ。

 演出したのは途中からマスクをかぶった桂だった。12回の守備。2死三塁で福谷が投げたフォークはベース手前でワンバウンド。桂は必死に体とミットを入れて止めた。谷繁兼任監督が「自分ならそらしていたかもしれない」というビッグプレー。結果、福谷は無失点リレーを完成させた。

 負けがなくなった最後の攻撃は簡単に2死になったあと、桂が今度はバットで貢献。中前に運び、藤井の劇弾につなげた。藤井は「桂がつないでくれる気がしていたので気持ちは準備ができていた」と、しぶとい打撃をほめたたえた。

 3回に山井がまさかの危険球退場。窮地で岡田以下、投手陣が踏ん張った。しかし打線は延長10回、11回など決定機を作りながら、ホームに1歩届かない。最悪の展開にも思えたが、最後に白星にたどり着いたことが大きい。

 「たくさんのお客さんの前で試合をするのが一番のモチベーション。勝つことでまたお客さんは増えると思うし、少しでも多い中で野球をやれるようにしたいです」。ファンを笑顔にさせる機会はまだ59試合もある。【柏原誠】