ソフトバンクが、日本ハム大谷を攻略して逆転勝ち、優勝マジック点灯に王手をかけた。難攻不落の右腕に対し、7回無死満塁から今宮健太内野手(24)が決勝打を放つなど3打点の活躍。7回途中7失点でKOした。今季2度目の6連勝で両リーグ最速の60勝に到達。今日5日も勝てばマジック38、引き分けでも39が点灯する。

 もはや敵はいなくなった。強い。強すぎる。難攻不落の右腕さえも、のみ込んだ。自ら考え、勝利に向かって動く。指揮官が描く理想を実現させる力が今の選手にはある。同点に追いつかれた直後の7回裏無死一、二塁。中村晃がバントと見せかけ、強攻した。バスターで一、二塁間を破り、満塁へとチャンスを拡大。工藤公康監督(52)は言う。「向こうの守備隊形によっては打っていい、と指示していた」。相手はバントシフトで一塁手中田がチャージをかけてきた。そのスキを鮮やかに突いた。

 そしてこの日のヒーローは8番打者だった。バスター成功の後、今宮は外角スライダーを左前に運んだ。決勝の2点タイムリー。「ここでストレートは来ない。チャンスで割り切っていけたのが、よかった」。5回に放った右翼フェンス直撃の同点三塁打は、直球に狙いを絞った結果だった。「すべて(の球種)は打てない。ストレートを絶対に前に飛ばそうと思った」。この打席が伏線となり、7回の決勝打につながった。勝負の流れを見事にとらえた。

 打率2割前後の低空飛行が開幕から続いた。それでも工藤監督は「お前は2、3年後に1番を打てる」と言葉をかけ、信頼は揺るぎなかった。その期待に応えようと、挽回(ばんかい)の日々だ。「チャンスで狙った球を1発でしとめられた。いい結果になってよかった」と今宮は笑みを浮かべた。3打点の活躍に酔いしれることなく、試合終了直後には二飛に倒れた4打席目の打撃を藤井打撃コーチと反省した。この妥協のない姿勢こそが圧倒的な強さを物語っている。

 強力打線でありながら、全員が犠牲にもなれるし、ヒーローにもなれる。大谷から4回まで9三振を奪われたが、終わってみれば、7失点KO。勝つか引き分けできょう5日に優勝へのマジックが点灯する。「マジックよりも勝ち越しを決めたい。常に短い目標を立てて勝っていく。それで貯金が増えたり、マジックにつながる」と指揮官は言った。今季2度目の6連勝で両リーグ最速の60勝に到達。ソフトバンクが無人の野を走る。【田口真一郎】

 ▼ソフトバンクが両リーグ60勝一番乗り。92試合目までの60勝到達は両リーグで05年ソフトバンク(87試合目)以来10年ぶり。今日5日の日本ハム戦に勝てば優勝マジック(M)38、引き分けでもM39が出る。