迷いを吹き飛ばすかのように、思い切って振り抜いた。0-0の6回。オリックス駿太外野手(22)が先制となる1号決勝ソロを放った。金子を援護する値千金の1発。「あまり感触はなかった。まさかホームランになるとは。(1号まで)長かった」。気持ちでロッテ石川の直球を右中間に届けた。

 涙の分だけ強くなったのかもしれない。7月31日楽天戦の延長10回、サヨナラ機で松井裕の前に空振り三振を喫した。「人生で一番悔しかった打席かもしれない」。まだ決着がついていない試合中、ベンチで思わず悔し泣きした。

 レギュラー奪取を期待された今季、打率は2割前後に低迷。球場にほぼ毎日一番乗りし、試合後もバットを振り込む。練習量はチームで指折り。それでも、結果が出ない。「練習をやっても意味ないんじゃないかと思った時もあった」。今季221打席目での初アーチで少しは報われた。

 試合前に腰の張りを訴えたT-岡田の代役で回ってきたスタメンのチャンスを生かした。福良監督代行も「よく打った。あれだけ練習してるから。結果が出て良かった」と喜んだ。3位ロッテと再び6差に縮めた打の殊勲者は「このホームランを今後につなげたい。みんな勝ち続けるしかないと思ってやっている」。40勝到達のチームとともに、反撃開始だ。【大池和幸】