連敗ストッパーが本領発揮だ。阪神の先発岩田稔投手(31)が7回2/3を投げ、6安打1失点で7勝目。前カードの巨人戦でメッセンジャー、能見、藤浪と先発の軸の3投手が敗れたが、「先発4本柱で4連敗」という状況を回避。すっきり丸刈りで臨んだ一戦で、チームもすっきりの白星だ。

 なぜ、丸刈り頭を選んだのか? 岩田は勝負どころで解答を披露した。2点リードの5回。内野陣の2失策で2死一、三塁とされ、4番筒香を迎えた。「いつも、あそこで崩れる。ここで打たれたら負ける、絶対に抑える」。低めのフォークで二ゴロ。土壇場で耐え、左拳を突き上げた。

 「背水の陣。ダメならファーム行きという危機感を持っていた」

 直近の登板3試合はすべて6回をもたず4失点。状態が上がらない中、あえて「体に刺激を入れた」。8月上旬の広島遠征中には休日を返上。土師ダムにある土山の傾斜を利用し、競技用バイクで体幹を鍛えた。

 前回登板後は下半身のウエートトレーニング量、ダッシュの本数を増やした。低い重心から下半身主導で稼働するフォームをようやく取り戻し、7回2/3を6安打1失点で無四球。3戦ぶり星となる7勝目には手ごたえが凝縮されていた。

 「髪の毛も刈ったし、6勝6敗でチャラの状態。ここからスタートなんだ、という気持ちでいった」

 東京遠征中の17日。ホテルの自室でバリカンを持ち、頭を丸めてひげもそり落とした。「邪気を払いたかったんや!」。照れ笑いでごまかしたが、実は深い意味を込めていた。

 「館山さんみたいやろ? 低めに集めて、粘り強くゴロを打たせる。オレにとって憧れの人やから」

 3歳上のヤクルト館山とは今夏、知人を介して食事する機会に恵まれた。3度の靱帯(じんたい)再建術を受けた右肘に残る、無数の手術痕は忘れられない。前回15日ヤクルト戦はその館山と投げ合い、負けた。その2日後、人並み外れた忍耐力を見習うべく、長めの髪をバッサリ切った。

 この日は“師匠”のように粘った。5月19日巨人戦以来となる梅野とのコンビでテンポ良く、内角を突く。4回は先頭から3連打で1失点しながら、最少失点でとどめた。今季、チーム3連敗以上の状態で4勝目。連敗ストッパーらしく、巨人戦3連戦3連敗で沈んでいたチームの雰囲気をガラリと変えてみせた。

 「スッキリしました。ムシャクシャ、モヤモヤがちょっとは晴れた気がします。これから1試合の重みが増す。しっかり結果を出し続けていきたい」

 メッセンジャー、能見、藤浪が3戦連続黒星を喫していた非常事態。4本柱、最後のとりでが土俵際でよみがえった。【佐井陽介】

 ▼阪神岩田がチームの連敗を3で止めた。先の巨人戦3連敗はメッセンジャー、能見、藤浪の先発投手に黒星がつき、岩田にも黒星なら今季初の「先発4本柱」で4連敗となるところだった。

 ▼今季藤浪、能見、メッセンジャーの順で3連敗した後、岩田が勝ち投手となったのは2度あった。5月5日中日戦(甲子園)と、同月13日ヤクルト戦(神宮)。今回は前日までの先発の順番が違うが、チームの窮地を救ったのは3度目となった。

 ▼岩田は6月16日日本ハム戦(甲子園)ではチームの連敗を4で止めた。