夢の数字まであと「3」に迫った。トリプルスリー(3割、30本塁打、30盗塁)を目標に掲げるヤクルト山田哲人内野手(23)が、初回に27個目の盗塁を決めた。現時点で33本塁打、打率3割2分8厘をマーク。残り3盗塁で、史上9人目の偉業に大きく近づく。足だけでなく、バットでもこの日先制適時打を放ち、チームを3連勝へけん引。首位阪神にゲーム差なしと肉薄した。今日3日は試合がないが、阪神が負ければ8月2日以来の首位に返り咲く。

 山田が走った。1回1死一塁、次打者・畠山への1ボールからの2球目。巨人先発ポレダの投球モーションを完全に読み切った。8月23日の中日戦以来となる27個目の盗塁。「走れる場面。けん制はないと直感的に思った」と、50メートル5秒8の俊足を飛ばした。

 今季の目標に「トリプルスリー」を掲げる。理由は「選手としてさらなるレベルアップを図りたい」という気持ちからだった。プロ4年目の昨季は、日本人右打者の最多安打となる193安打をマーク。一流打者としての仲間入りを果たしたように思えたが、「足も守備も完璧でなければ本当の一流とは言えない」と今春キャンプから、足に磨きをかけてきた。

 08、09年に盗塁王を獲得した福地外野守備走塁コーチは「去年から比べて、スタート、走るコース全てにおいてレベルアップしている。意識が変わっていることが大きい。いろんな盗塁王を見てきたけど、もちろん僕のタイプではないし、(元阪神の)赤星とも違う。山田はオンリーワン」と最上級の評価を与える。今春キャンプから指導を受ける“先生”の期待に応えるように、着実に記録を伸ばしている。

 それでも山田は満足していない。初回に三盗を成功させた比屋根を引き合いに出し、「僕はまだ三盗の技術がない。やらなくては」と飽くなき探求心をみせた。バットでは、初回1死三塁から先制の左前適時打。試合前まで13打数2安打に抑え込まれていた天敵ポレダを攻略し、打率3割台をガッチリとキープした。

 チームは巨人、阪神との6連戦を5勝1敗で終え、7戦目も勝利で飾った。首位阪神とはゲーム差なし。真中監督も「この7戦が大きかったとシーズンを終えた時に言いたい」と手応えを口にした。山田も「これほど勝てるとは想像してなかった」。トリプルスリーに向けて「走れる時に走ります」とたくましかった。過去に8人しかいない記録達成者。山田が、その仲間入りを果たそうとしている。【栗田尚樹】