今日にもトリプルスリー到達だ。5回2死一、三塁、ヤクルト山田哲人内野手(23)が28個目の盗塁を決め、3割、30本塁打、30盗塁まで、あと2盗塁に迫った。この日は盗塁以外での意識の高い走塁も披露。やみくもに走らない山田の姿勢に、チームメートからのエールも大きくなるばかりだ。

 チームのための走りだった。8回1死一塁、山田は3度の偽装スタートで相手バッテリーに重圧をかけた。4度のけん制を受けながら、機敏な動きを繰り返す。ベンチからは「よくスタート切らなかった。ナイス偽装」と声が飛ぶ。チームの勝利のため、盗塁よりも相手へのプレスを選択する山田に、ベンチのムードが高まっていった。

 4度目に本当のスタートを切り、畠山は打って捕ゴロ。だが、二塁に到達した山田が三塁へ進む姿勢を見せたからか、相手の一塁悪送球を呼び、貴重な4点目のホームを踏んだ。三木作戦コーチは「走塁の技術もスタートの勘もどんどん良くなっている。8回の場面の動きなんて点数がつけられないくらい良い」と絶賛した。打者と走者の連動で相手バッテリーを崩す。今季、チームが取り組んできた戦術の理解度が、ここにきて格段に深まってきている。

 5回2死一、三塁、山田が28個目の盗塁を決めた場面にも、チームの走塁への意識の高さが見えた。山田の思い切りのいいスタートは裏目に出た。広島ジョンソンは投球に入っておらず、一塁にけん制を投げてきた。だが、その瞬間に三塁走者の比屋根が本塁をうかがうそぶりでアシストした。広島新井の二塁送球をわずかに遅らせたのが、山田の盗塁を成功させた。

 チーム全体の走塁意識の向上が、連勝に結びついている。その最先端に山田もいる。この日の試合後、ベンチで三木コーチとおさらいのミーティングをした。いつもなら翌日の練習の際に行うもの。この日は反省点のある盗塁に、駆け引きを繰り返した偽装スタート。確認したいことが多かった。「今やりましょう」と山田から持ちかけた。

 現時点でトリプルスリーに到達していない「30盗塁」まであと2。今季、2盗塁は4試合で決めており、今日5日にも到達できる数字だ。「貪欲に行きたい」と繰り返す言葉とは裏腹に、チームのための走塁を貫く山田。だからこそ「みんなが達成させてやりたいと思っている」と、三木コーチがチームメートの思いを代弁した。【竹内智信】