現役引退の日を迎えた中日和田一浩外野手(43)が日刊スポーツに手記を寄せた。ホーム最終戦(阪神戦)に先発し、2回に勝利に導く安打を放った。球史に残る打撃職人が、球界の発展を願ってラストメッセージを送った。試合後は、谷繁兼任監督をはじめナインから胴上げされ、19年の感謝をファンに伝えた。チームは2連勝で約1カ月ぶりに最下位を脱出した。

 生まれて初めての胴上げ。とうとう、される側に回ってしまった。場内を1周しているときは幸せな気持ちでした。ついにこれで終わり。重圧から解放される喜びと、疲れや緊張感を味わえなくなる寂しさと。とりあえず明日は目覚ましをかけずに寝ます(笑い)。

 これからは後輩と話す機会も少なくなるので、よく話をするようにしている。もっとこうした方がいいぞと。コーチじゃないから技術はあまり言えないけど、ユニホームを脱ぐ人間だからこそ言えることもある。

 プロ野球選手は、なること自体が大変な世界。でも、せっかくなれたのに、いい思いをできないのはもったいない。表現は悪いけど「たかが野球」。打つだけでお金をたくさんもらえるんだから。年俸の安い選手は1軍にいるだけで最低保障で1日何万円ともらえる。ヒットを打てばもっともらえる。じゃあ打てよ。打つために練習しろと。現役生活は短いんだから。

 今の中日にはプレーで引っ張れる選手がいない。平田には期待したい。体つきも飛ばす力も3割、30本の力があるのに。もっとヤンチャに荒々しくやっていい。優等生なんだよね。すごい能力を持っているし、年齢的にも軸になっていかないといけない。

 後輩たちには、例えば巨人やソフトバンクにいってもレギュラーを取れる力をつけてほしい。今やっていることでいっぱいいっぱいで、地力がない。「こんなもんでしょ」という気持ちでやっているんじゃないかな。中日なら立浪さん、井端、谷繁さんらがそうだったようにドカーンと抜け出す選手が出てこないと。

 中日は1人が調子を落とすと、みんなダメになる。僕はエースや抑えが出てきたら常に「俺が打ってやる」という気持ちでいた。投手では、前なら吉見が引っ張っていた。だから大野には期待している。力がある選手が1人いると、すごく周りが楽になる。

 野球ってすごい。何だかんだで球場に人が集まってくれる。日本はやっぱり野球なんです。その野球を魅力あるものにしてほしい。この環境を幸せに感じて、いいものを見せるぞというプライドを持ってほしい。

 振り返ると、つらかったことばかり。最後まで打撃は難しいなと思っていた。できるなら高校からやり直したい。これからは外から打撃を勉強します。自分ではもうできなくても、新しい発見があればうれしいと思う。応援していただいた皆さんには感謝の気持ちしかありません。19年間、本当にありがとうございました。(中日外野手)