ソフトバンク松中信彦内野手(41)が29日、ヤフオクドームで会見を開き、来季も現役続行を目指すことを明らかにした。球団からは自らの去就を一任されていたが、野球への意欲は衰えずに28日に自由契約を申し入れた。19年間在籍したチームの退団が決定。他球団のベテラン選手が続々と引退表明する中、平成唯一の3冠王はプレーする場を求め、移籍先を探すことになった。

 世代交代の波が押し寄せる球界で、松中が重大な決断を下した。球団側に自由契約を申し入れ、19年間在籍したホークスを今季限りで退団することが決定。来季も現役続行を目指すことを宣言した。

 「体も元気だし、気力もある。ここで引退して後悔するよりは、ボロボロになるまで野球を続けたほうが後悔しないんじゃないか、という思いで決断した」

 オープン戦で結果が残せずに左肩痛も重なった。走攻守そろったプレーを1軍選手に求めるのが工藤監督の方針。選手層も厚いことから、優勝決定まで1軍昇格の機会は得られなかった。8月に王球団会長と会談するなど、水面下で球団首脳と話し合いを重ねてきたが、結論には至らず。球団側は功労者であることを考慮し、本人に進退を一任した。来季も残留の選択肢はあったが、事実上の構想外。松中自身も21日の日本ハム戦から1軍に初合流し、自らの居場所がないことを痛感した。

 「ベンチにいた瞬間に『ああ、僕のポジションはもうないんだな』『僕が教えられることはもう全部教えたんだ』という気持ちになった」

 28日まで6試合で7打数無安打だが、意欲は尽きなかった。ウエスタン・リーグでは打率2割9分9厘、11本塁打を記録。「ホークスで終わりたいという気持ちでいたが、それ以上に野球がしたい。もう1度復活する姿をファンに見せたい」。今後は移籍先を探すが、独立リーグなどNPB以外の球団を選択肢に入れることに関しては「全くの白紙。決めたのが急だったので」と話すにとどめた。年齢やここ数年の成績を見れば、手を挙げる球団があるかは微妙な状況だ。平成唯一の3冠王は1軍でプレーする場を求め、厳しい道を選んだ。

 ◆松中信彦(まつなか・のぶひこ)1973年(昭48)12月26日、熊本県生まれ。八代第一から新日鉄君津を経て、96年ドラフト2位でダイエーに入団。3年目の99年にレギュラー定着し、福岡移転後初優勝に貢献。04年に3冠王。06年1月には7年契約を結んだ。同年WBCに出場し、世界一に。家族は夫人と3男。今季推定年俸は3500万円。183センチ、97キロ。左投げ左打ち。