鳥谷を超えろ! 高知・安芸キャンプに合流した阪神久慈照嘉1軍内野守備走塁コーチ(46)が7日、さっそく鳥谷に続くショート育成に着手。成長株の北條史也内野手(21)にノックを浴びせた。頭にグラブをかぶせノックを受ける珍メニューを課すなど合流初日から久慈カラー全開。球団史に残る名手が鍛え上げる。

 珍しい光景だった。小雨の舞うサブグラウンド。平田チーフ兼守備走塁コーチのノックを受けていた北條が、おもむろにグラブを頭にかぶった。捕球体勢に入っても、スローイングをしても、頭の上のグラブは落ちない。おふざけでもなければ、雨よけでもない。れっきとした練習だ。

 発案者は来季3年ぶりのタテジマ復帰となるため、この日からキャンプに合流した久慈コーチ。かつての名手は、期待の若手にグラブをかぶるように指令を出した。「スローイングが終わるまで(体の)軸を大事にしてほしい。重みがあるだけで軸を意識する」(久慈コーチ)。理由は軸を意識して、体のブレをなくすためだった。

 練習開始から30分が経過した頃には、久慈コーチ自らノックバットを握った。北條を呼び、闘争心をあおるひと言を言い放った。

 久慈コーチ 守備範囲を1歩でも広くやっていかないと(鳥谷は)超えられないぞ!

 マンツーマンのノックは時間にして26分間。本数は56本だったが、守備範囲のギリギリを狙うノックで、北條は左右に振られヘトヘト。1本ごとに声を掛ける「対話ノック」が続いた。

 駆け出しだった鳥谷を鍛え上げた同コーチは「(頭のグラブは)鳥谷もやってたよ。ただ、練習は3倍くらいはやってた」と、明かした。ただ、鳥谷流ノックについても「どれが合うかは彼が判断すればいい」と、無理強いはしない。試行錯誤しながら北條にあった練習法を探る考えだ。

 指導を心待ちにしていた北條は「まだまだ甘い。もっと足を使っていかないといけない」と、泥だらけ。「このキャンプで1歩でも(守備範囲を)広げられるようにやっていきたい」と目を輝かせた。【桝井聡】