阪神植田海内野手(19)が9日、高知・安芸の1軍秋季キャンプに合流した。2軍鳴尾浜秋季キャンプを視察した金本監督が緊急招集を即決し、前日8日に高知入り。特守では高卒1年目を終えたばかりとは思えない滑らかな動きを披露し、久慈内野守備走塁コーチから「(楽天)松井稼頭央みたいになってくれれば」と大きな期待を寄せられた。

 安芸市営球場から見下ろせば、太平洋が果てしなく広がっている。そんな“大海原”に育ってほしい。まだ19歳。まだ高卒1年目を終えたばかりだ。植田海(かい)の特守をチェックした後、久慈内野守備走塁コーチはレジェンドへの成長を夢に描いた。

 「足の速さは一番の武器になる。それで守れたら本当に、貴重な戦力になる。松井稼頭央…。なってくれればいいかな。スピードがあって、ゆくゆくはそうなる可能性はある」

 金本監督に素材の良さを買われ、2軍鳴尾浜キャンプから緊急招集された。1軍キャンプ合流初日。まずはドーム内で実戦形式のバント練習に励んだ際、一瞬で高代ヘッドコーチの目を奪った。「ええ足してるね。バントした後のランニングで、ああ速いなと思った」。50メートル5秒8。名刺代わりの俊足を披露すると、昼下がりのサブグラウンドでは内野守備でうならせた。

 荒木、陽川、原口と4人で臨んだ遊撃特守。35分にわたり、久慈コーチのゴロノック計79球を受けた。5失策を喫し、捕球から送球に移る際にグラブを返してしまう癖も指摘された。「グラブを返したら握り損ねたりしてしまうんで」。植田本人は反省を口にしたが、久慈コーチは二塁送球の速さを高評価した。

 「ショートスローがうまい。トータルで見たら、いいものを持っているなという印象だね」

 今季は腰痛に苦しんだこともあり、合流初日は他の3人より早めに特守を切り上げた。首脳陣の配慮に感謝しつつも、「全然まだまだできました!」と力強い。「緊張感で疲れました」と苦笑いした通り、フリー打撃58スイングではシュアな打撃を披露できず柵越えゼロ。持ち味の本格アピールに向け、「ベースランニングした時ですね」と鼻息を荒くした。

 カズオになれ-。走攻守3拍子をそろえ、メジャーでも活躍したレジェンドの名前を伝え聞くと、さらに気合をみなぎらせた。「上の選手を目指して頑張っていきたいですね」。金本監督即決の緊急招集を、サクセスストーリーの始まりに変える。【佐井陽介】

 ◆植田海(うえだ・かい)1996年(平8)4月19日、滋賀県生まれ。近江3年夏に甲子園に出場し3回戦進出。14年ドラフト5位で阪神入り。1年目の今季はウエスタン・リーグで51試合、25安打、1本塁打、5打点、打率2割。守備はすべて遊撃を守った。175センチ、72キロ。

 ◆阪神の内野手事情 遊撃手は不動の鳥谷、一塁手は残留のゴメスが決定的でレギュラーが確定していないのは二塁と三塁になる。二塁は昨季途中から定着した上本、来季は内野に専念する見通しの大和、右肘故障からの復活を期す西岡という三つどもえの競争となる。さらに最も懸念されるのは三塁で、現時点では獲得に乗り出している新外国人ハグ、今季出場実績のある今成、新井、さらに長打力で将来の主砲として期待される陽川らが候補となる。