1軍登板ゼロ左腕が“ギータ斬り”で猛アピールした。西武の4年目、佐藤勇投手(21)が28日、ソフトバンクとの練習試合に先発し、4回を3安打2失点と上出来の投球を披露した。昨季トリプルスリーを達成した柳田からは、2打席連続の空振り三振を奪うなど成長を猛アピールした。まだ確定していない先発ローテーション枠に飛び込んでくる可能性も出てきた。

 緊張を楽しみに変え、佐藤は思い切り腕を振った。3回1死一塁で打席には柳田。ひるむことなく直球を投げ込み追い込むと、外角低めへのスライダーに大砲のバットは空を切った。1回の第1打席に直球で奪ったのに続く、2打席連続の空振り三振だ。「柳田さんの調子が悪いのかな、とも思ったんですが、自信にもなります。(ソフトバンク打線は)ほとんどテレビで見ていた選手で、それを楽しみに投げられました」と、初々しい笑顔をみせた。

 憧れの投手から学んだスライダーが効果的に決まった。2年前のオフから同じ東北出身の菊池に弟子入り。昨年末に握りを伝授された。「まだまだ(菊池)雄星さんほどの威力はないです」と謙遜するが、松田からも三振を奪うなど、日本一チームを翻弄(ほんろう)するまでになった。先輩左腕との合同トレは肉体改造にもつながり、フルスクワットで上げる重量は、約2カ月間で30キロ増の95キロまでアップ。下半身の強化も進化の下地になっている。

 ここまでの3年間は、精神面が最大の課題だった。登板前日は一睡も出来ず、朝、昼の食事がのどを通らないこともあったという。1年目から2軍監督を務めていた潮崎ヘッド兼投手コーチは、「前だったら試合進行を妨げるような投球をしていたと思う。今は平常心で投げられるようになっている」と成長を評価。先輩左腕との厳しいトレーニングと、初参加のA班(1軍)キャンプを乗り越えたことが自信を生んでいた。

 3月のオープン戦では岸、菊池ら他の先発陣が投げるため、今後は2軍で登板を重ねる予定。この日も逆球となった外角直球を本塁打されるなど、まだまだ粗削りな部分もある。初の開幕1軍入りを目指す佐藤は、「もっともっと直球も変化球も磨かないといけないし、課題はたくさんある。雄星さんを超せるように頑張りたい」。成長曲線の先には、先発ローテ入りも見えている。【佐竹実】

<佐藤勇(さとう・いさむ)アラカルト>

 ◆生まれ 1994年(平6)9月18日、福島・西郷村生まれ。

 ◆サイズ 182センチ、85キロ。左投げ左打ちだが「野球以外は右利き」。血液型B。

 ◆競技歴 小田倉小5年時に、小田倉ソフトボールスポーツ少年団で投手としてソフトボールを始める。西郷二中で野球部入部。2年秋からエース。県南選抜に選出。光南高では1年夏からベンチ入り。3年夏にエースとして県4強。甲子園出場なし。12年ドラフト5位で西武入団。

 ◆持ち球 カーブ、スライダー、チェンジアップ、フォーク。最速は入団1年目のフェニックス・リーグで記録した151キロ。

 ◆家族 母、姉、兄3人。5人きょうだいの末っ子。01年に父親を亡くし、母久江さんに女手ひとつで育てられた。高校入学時に買ってもらったグラブは宝物。