昨年限りで引退した「球界のレジェンド」こと元中日山本昌広氏(50)の引退試合が5日、ナゴヤドームでのオープン戦(対ヤクルト)で行われた。球団と「1日契約」を結び、背番号34のユニホームをまとって慣れ親しんだナゴヤドームの先発マウンドに上がった。

 左指をなめ、大きく振りかぶるワインドアップから、独特のダイナミックな投法で全力でボールを投げ込んだ。先頭打者の元同僚森岡に対して、1球目は外角へ114キロストライク。続いて低めに109キロストライク。そして3球目、低めに得意のスクリューボール決めて森岡は空振り。3球でラストを飾り、ベンチのナインに握手。さらにヤクルト真中監督から花束を受け取り、何度も場内に頭を下げた。涙はなかった。試合後にはセレモニーが予定されている。

 登板後の会見では「初球に114キロも出ていたので、もう少し(現役を)できるんじゃないかなと思った(笑い)。1カ月練習したら135キロ出るかも。肘が飛ぶくらい投げたらもっと出ますよ。ナゴヤドームのマウンドからの景色は独特。この場を用意してくれた球団とスワローズ、ファンの方々に感謝しかないです」と笑顔だった。

 昨年までのプロ32年で通算219勝165敗。最多勝3度、沢村賞1度、無安打無得点試合1度。50歳目前だった昨年8月9日に先発。勝てば最年長勝利の世界記録だったが、投球中に左手を突き指するアクシデントで22球で降板した。これが引き金になり、引退を決意。中日のシーズン最終戦だった同10月7日広島戦(マツダスタジアム)に先発し、打者1人を退けた。史上初の50歳登板で最後を飾り、自らの持つ伝説的な最年長記録を更新した。