由伸巨人の「伝統の一戦」新時代の幕開けは、猛虎の勢いにのみ込まれた。高橋由伸監督(41)は昨季対阪神5勝の虎キラー、アーロン・ポレダ投手(29)を先陣に起用。だが助っ人左腕は3盗塁を許すなど引っかき回され、6回で自己ワーストの8失点を喫した。記録にならないミスも多発し、2-8で今季初の完敗と言える内容で初戦を終えた。

 巨人の拳は猛虎の牙と交じり合う前に、足元からもろく崩れた。得点は動いたが、試合はロースコアのように2時間35分と淡泊だった。指揮官として初の「伝統の一戦」を終えた高橋監督の言葉が象徴していた。「ミスがたくさんあった。あったから、なかったら、どうなっていたかは別に言うことじゃない。でもミスは少しでも防がないといけない」。拳と牙を突き合わせた戦いにならなかった。

 虎狩りの名手ポレダが自滅した。初回に先制点を失い、3回先頭の藤浪に安打を許し、リズムを失う。無死一、三塁で頭上に高く跳ねたゴロに、ゆっくりと一塁送球してしまっては、俊足横田に内野安打を献上するのは必然だった。さらに1死一、三塁から重盗を敢行された。捕手小林誠の二塁送球はクルーズの前でバウンドし、中堅に抜けて、この回3点目となった。

 重盗は「最初は(二塁送球をカットする)サインを見逃したと思ったが、自分の体が捕手の視界に入ったためうまくいかなかった」と送球ラインを空けきれなかったことを明かした。来日1年目の昨季はクイック投球が不得手で、機動力に対する備えが課題だった。今季はクイックタイムも向上し、モーションも緩急をつけ、走者を巧みにけん制していた。

 だが6回にはノーマークのゴメスに二盗され、昨年7度の対戦で6盗塁だった半分にあたる3盗塁を与えた。さらに一塁手ギャレットの低い守備力でピンチを増幅させ、ボークも犯し、6回の4失点で藤浪の前では重すぎる8点を積み上げ、試合の大勢は決した。

 菅野と両輪を担う助っ人左腕は「自分でコントロールできることをやり続けることが大事」と細事を見直すことを刻んだ。高橋監督も“走る新生猛虎”に度肝を抜かれたわけではない。「(機動力は)初めから分かっている。防げることだったり、防がないといけないことの方が多い」。戦いの土俵に立ち、真の力を虎にぶつける。【広重竜太郎】