西武が、牧田和久投手(31)の好救援で5連勝を飾り首位に浮上した。同点に追いついた直後の5回、予定を前倒しして登板すると4イニングを無失点に抑えた。セットアッパーをやりながら、ロングリリーフを兼務する獅子奮迅の働きはエースというよりジョーカー。何にでもなれる牧田が、チームをけん引する。

 西武のブルペンはにわかに慌ただしくなった。秋山の同点2ランが飛び出した直後だ。2番手で準備していた郭俊麟ではなく、牧田の繰り上げ登板が決まった。前日8日のロッテ戦で1イニング投げているが、疲れはなかった。「前の日は失点してたのでリベンジの気持ちが強かった」。さっそうとマウンドに行くと、気持ちを前面に出した投球で、ロッテの打者を1人ずつ抑えていった。

 最近の球界では見られない役割だ。勝ちゲームでは7回の1イニングを任され、負けていたり同点の展開でも長いイニングを託される。先発から守護神まで、何でも経験している牧田だからこそできる仕事。「そこが自分の強み。自分にしかできないこと。代わりはいないと思ってやっている」と胸を張った。

 3試合連続の登板となったこの日は、何イニング投げるかも分かっていなかった。「1球1球が勝負球のつもりで投げました。風が味方してくれて、いつもならボールになる左打者へのカーブがストライクになったり、高めの球がジャイロ回転で強い球になったりしていた」。どんな状況下でも役に立つ。そんな覚悟が球に乗り移った。

 大学時代からキャッチボール3球でマウンドに上がれるほど肩の出来上がりが速いことが、ジョーカーのような何でも屋の役割を可能にしている。「行けと言われれば、明日も行くつもりですよ」と、頼もしすぎる右腕。首脳陣は今日10日のロッテ戦(QVCマリン)は、さすがに休養させる意向だが、言葉で発せられた牧田の闘争心は、首位に立ったチームを後押しする。【竹内智信】