巨人菅野智之投手(26)は4月ラスト登板で記録ずくめの快投を見せたが、白星には直結しなかった。阪神戦の5回に坂本の適時失策で1点を失い、連続イニング無失点は30でストップ。自己最多タイの12三振を奪い、8回1失点(自責0)で勝ち投手の権利を得て降板したが、9回に守護神沢村が同点とされ、試合も引き分けに終わった。エースは4月に33イニングを投げて驚異の防御率0・00で締めたが、2戦連続で勝ち星が流れた。

 試合後、菅野は守護神の心情を思いやった。8回1失点(自責0)の好投も、9回に沢村が同点に追いつかれ、4勝目が消滅。1イニングの重みを誰よりも理解するエースは、変わらぬ思いを言葉に込めた。

 菅野 本人が一番つらいと思います。これまで、助けられている試合がたくさんある。普段の取り組みも素晴らしく、誰も責める人はいないですし、僕自身も全然気にしてません。

 前回登板の22日DeNA戦でも、7回無失点の好投で勝利投手の権利を得たが、沢村がセーブ失敗。試合後、頭を下げ続ける守護神に「いつも、助けてもらっています。謝らないでください」と声を掛けたエースは、この日も同じ言葉で思いを示した。

 マウンドでも、動じなかった。3点リードの5回1死一、二塁、坂本の悪送球で連続無失点イニングが30でストップ。「僕はそんなに意識はないです」と振り返ったように、あっさりと後続を断った。7回にも失策が絡み、迎えた1死満塁のピンチを「狙いにいった」と連続三振。自身最多タイの12三振を奪った。

 並外れた闘争心が、菅野をマウンドに向かわせる。前回登板、マメがつぶれた中指を見ながら、高校時代を思い出した。当時、日々の投げ込みでマメが悪化。強化するために、時間さえあれば「指で机をたたいた」。当時のように、ベンチで連打したのは、飲料用の紙コップの裏側。「1回でも長く」。血で真っ赤に染まった紙コップはエースの覚悟を物語った。

 白星は得られなかったが、突出した数字が安定感を証明した。4月は計33イニングを投げ、防御率は驚異の0・00を記録した。高橋監督は「今日は真のエースというピッチングだった」と称号とともに、好投をたたえた。止まった無失点イニングだが、次戦は3から再スタート。「また、長いイニングを続けられるように頑張りたいです」と前を向いた。【久保賢吾】

 ▼菅野が8回を自責点ゼロ(失点1)に抑え、4月は33イニングを投げ防御率ゼロ。2リーグ制後、月間30イニング以上を投げて防御率ゼロは63年9月中井(阪神)70年10月村山(阪神)01年6月石井一(ヤクルト)に次ぎ史上4人目の快挙。4月では初めてだ。12奪三振は13年5月18日西武戦に並ぶ自己最多。