たった1点の援護が重かった。DeNA今永昇太投手(22)が勝てない。6回2/3を投げ、3安打2失点。14三振を奪う好投ながら、プロ5戦目で4度目の敗戦投手に泣いた。ほぼ阪神ファンでスタンドが埋まる聖地・甲子園。魔物のいたずらなのか…。新人左腕は「勝利投手の権利がかかっていた。今までにない感覚だった。弱気というか、守りに入ってしまった」と己の心中を分析した。

 たった1つの四球が勝敗の針を動かした。1点リードの5回。先頭の鳥谷に四球を与えた。この試合、ここまで無安打で9奪三振の快投。4回に味方打線が先制し、プロ入り後初めてリードをもらい、勝利投手の権利がかかる5回のマウンドだった。「四球が悪いんじゃない。出し方が悪い。その後の本塁打はいくらでも防げる。それよりも四球を出してしまった心境を変えていかないといけない」。無死一塁から陽川にチェンジアップを狙われ、痛恨の逆転2ランを見送った。

 悲運としか言いようがない。味方の援護点は自身がマウンドにいる間、5戦でわずか2点しかない。それでも「心のどこかで野手の方に『勝たせてもらえる』という気持ちがあった。それではダメ。勝利は自分でつかみにいく。今日はそう強く思って投げた」と振り返った。5戦で積み上げた43奪三振は巨人菅野を上回る堂々のリーグ2位。「三振が取れる投手よりも勝てる投手がいい投手」と今永は言う。大きな1勝は次戦マウンドでわしづかみする。【為田聡史】

 ▼ルーキー今永が14奪三振で敗戦投手。新人の1試合14奪三振以上は08年4月5日大場(ソフトバンク=16個)以来だが、DeNAでは洋松時代の53年5月30日権藤に並ぶ最多記録となった。14奪三振以上で敗戦投手は11年8月25日ダルビッシュ(日本ハム=15個)以来、5年ぶり。新人では40年11月16日清水(南海=9回で15個、延長で17個)90年5月8日野茂(近鉄=14個)93年6月9日伊藤(ヤクルト=16個)に次いで4人目の不運だった。