阪神大和外野手(28)が、11年目で通算2本目の1発を決め、1-0の薄氷勝利を完成させた。7回2死。中日2番手山井の初球、高めスライダーを強振した。ライナーで左翼席に先制ソロ。「打った瞬間、入ると分かった。まぐれです」。14年5月14日広島戦(米子)以来、651打席ぶりの1発で2連勝&3位浮上に導いた。

 「大和、あんたは佑介兄ちゃんの分まで頑張らんといかんよ」。小さい頃、両親から何度も諭された。大和には姉と兄がいる。ただ、3人きょうだいの末っ子ではない。実はもう1人、天国に7歳上の兄がいる。長男佑介さんは誕生直後から重い心臓病を患い、わずか6カ月で短い生涯を終えた。幼少期はもちろん、今でも鹿児島・鹿屋市に帰省するたび、墓参りは欠かさない。

 「だから僕は三男なんです。佑介兄ちゃんが元気だったら、そもそも僕は生まれていないかもしれない」

 「こどもの日」。昨年8月に第1子となる長男が生まれた。甲子園お立ち台でもらったトラッキー人形と戯れる9カ月の愛息を見るたび、あの頃両親が伝えたかった思いをかみしめる。「兄ちゃんのためにも頑張らないといけない」と。

 金本監督のもと、昨秋キャンプから「引っ張れる」長所を伸ばそうと、ヘッドを利かせた強振を追求してきた。指揮官は「今年はあと4、5本出そうな気がする」。天国の兄に喜んでもらうため、さらなる「超変革」に挑む。【佐井陽介】