「きょうは負けかな」と序盤からこれほど感じさせる試合も今季初めてだったもしれない。今季最長タイとなっていた連勝は「5」でストップした。もっとも大型連勝なし…というのが今季の特徴なので“通常運転”という感じか。指揮官・藤川球児も「負けはしましたけど。また前向きに明日いけると思います」と冷静に話した。
そんな敗戦の中「いいなあ」と思ったのは9回に1発を放った佐藤輝明だ。はっきり言って本調子ではないと見ているが、それでも結果を出すのはホンモノの4番になった証拠だろう。
同時にちょっといただけないかも、と思ったのは6回の森下翔太である。見逃し三振に倒れると球審・深谷篤に何事かつぶやいた。すると深谷は厳しい表情を浮かべ、詰め寄りそうな様子を見せたのだ。森下はそのままベンチに下がったので選手より審判が熱くなっている様子にも映った。
深谷には有名なエピソードがある。日米球界のレジェンド・イチローとともに甲子園で戦ったというものだ。ともに73年生まれ、今年53歳の2人は愛工大名電の同期。91年のセンバツに同校が出場したとき、深谷は主将だった。
イチローをよく知るからこそ「一流選手ならそれらしくしろ」みたいな感じかな…などと思ったのだ。オリックス時代に連日、取材したイチローの審判に対する態度は知っている。ときに不満を示すこともあったが緊張感をもたらすようなことはなかった。大リーグでも同様だったと思う。
プロ4年目の森下は6月6日の楽天戦(甲子園)で真鍋勝巳に暴言をはき、退場処分になっている。それを思い出す光景だった。熱くなって戦うのは悪くないと思うし、気迫を出す森下は阪神にはめずらしいタイプとして期待している。それでもジャッジに対して感情を大きく揺らすのは、やはり、やめた方がいい。
以前から書いているが、いまの阪神は佐藤と森下のチームなのだ。その命運を左右する重要なコンビの1人がそんなにカッカしては困るだろう。森下をなだめていた佐藤は、さすがに先輩と感じた。
何と言っても、いまは悲願の連覇に手が届きそうな大事な時期である。2回には打球にバウンドを合わすことができず、そらすプレーもあった森下。いつも自分が思うようにはいかないし、ここはプレーも気持ちも冷静に…と願いたい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




