本塁の攻防で諦めない粘りを見せた。DeNA倉本寿彦内野手(25)が“神走塁”で決勝点をもぎ取った。同点の6回1死一、三塁。戸柱の一塁へのゴロで本塁に突進。タイミングは完全にアウトだった。「捕手を避けながらタッチをしようと思ったんですが…。ただ、何とか点を取りたかった」。巨人小林誠の後方から回り込みながらの生還を狙ったがホームベースから離れすぎて手が届かない。即座の判断で浅めのスライディングに切り替え、すぐに立ち上がった。

 タッチを狙う相手捕手との駆け引きで一瞬だけ両者の動きが止まった。「ミットをずっと見ていた。こっちにくるのは分かっていたので」。相手の出方をじっと待ち、タッチにきたところを見事にかわすと、目いっぱい手を伸ばして三塁方向から本塁を陥れた。「一瞬なんで、自分でも分からなかった。諦めなくて良かった」と決して俊足とは言えない倉本が、照れながら振り返った。

 ラミレス監督も予想外の好プレーを絶賛した。「今まで見た中でベストなスライディングだった。あのタッチプレーで試合の流れがこっちにきた」とうなずく。大味な打撃戦だけではなく勝負の分かれ目で試合巧者としての姿も見えてきた。4月14日から1カ月以上も最下位が続くが、この日の勝利で5位ヤクルトとゲーム差1となった。中盤以降に流れを引き戻し、7得点快勝に持ち込んだ。「この流れを福島に持って行って勝ちたい」と指揮官。首位巨人から連勝をいただく。【為田聡史】

◆巨人小林誠、3月に続きまたやられた

 巨人が本塁クロスプレーで試合の流れを失った。6回1死一、三塁での一ゴロからの送球を受けた捕手小林誠が倉本にタッチをかわされて決勝点を許した。高橋監督はリプレー検証後も審判に説明を求めた。本塁上では3フィートルールがない。「走者があれだけベースから遠ざかった? そのへんを聞きたかった。納得するも何もルールなので。詳しいことはこれから自分で勉強します」。3月31日のDeNA戦でも小林誠はロペスにタッチをかわされて生還された。正捕手は「僕のミスです。ロペスには待ってかわされたのでタッチに行く形を取った。試合を壊してしまった」と反省。対策が必要になる。

◆「走路を空けろというから追いタッチに」

 巨人村田ヘッドコーチ(6回の本塁クロスプレーに)「(コリジョンルールで)走路を空けろというから追いタッチになる。そうすると忍者ごっこになるやん? 運動神経があってバネのあるやつにはかわされる。打者走者には(進塁)2つ行かれるが、捕手にベースをまたいで待てと言うしかないのかな…」

◆「走者はどこまでも外れていい? それは野球を愚弄」

 笠原責任審判(6回のクロスプレーに)「高橋監督からは『ラインアウトではないか?』と聞かれたが、(本塁上は)3フィートラインがないということです。走者はどこまでも外れていい? それは野球を愚弄(ぐろう)することなので退場です。捕手が待って走者が動かなくてもアウトになります」