いよ、選手会長! 中日大野雄大投手(27)が有言実行の今季初完封勝利でチームを救った。4連敗中で最下位転落の危機もあった巨人戦で、3安打シャットアウトの5勝目。1回裏に1度二塁を踏まれただけで、その後は得点圏にさえ走者を進めなかった。選手会長の自覚から、連敗ストップを公約に掲げて鮮やかに実行。いま立候補したら、当選してしまうかも!?

 誰にもマウンドは譲らなかった。9回2死走者なし。大野が相対したのは同じ88年生まれの巨人坂本。3球で右飛に仕留めると、ナインと勝利のハイタッチを交わした。昨年は5戦で0勝3敗と苦手としていた巨人相手に、わずか105球で散発3安打。東京ドームのスコアボードに「0」をきれいに9個並べた。

 有言実行の完封勝利だった。チームが4連敗中でマウンドに向かった。負ければ最下位転落の可能性もあった。前日27日、汗を流した神宮軟式野球場。大野は静かに闘志を示した。「自分はチーム状況を気にしないといけない選手。連敗も意識するし、週初めに投げるのも意識する。やり返す1週間にしたい。頭(初戦)を取れるようにしたい。俺が止めるという気持ちでいく」。力強い言葉には、今年から新たに背負った「選手会長」としての思いがあふれた。

 カード初戦を任された責任もある。左肘痛から交流戦中に戦列に復帰。当初はカード2戦目の登板を重ねてきた。18日の前回登板から中9日。今回から週初めの先発を任された。「自分に求められているのはイニングを重ねること。週の頭に変更になったのはそういうこと」。この1週間、どのような戦いが続くのか分からない。1日でも多く中継ぎ陣を休ませるため、左の柱は9回を投げきった。

 得点圏に走者を背負ったのも1回裏の1度のみ。完封勝利は15年6月11日ロッテ戦以来、383日ぶり。それでも「喜びはない。次も勝てるようにしないと。今晩から次に勝てるように考えます」と淡々と話した。「選手会長という立場をしっかりと意識していかないと。連敗を止めないといけない。プレッシャーになりますけど。本当は気にしたくないんですけどね」と、やるべきことを果たしたと言わんばかりだった。

 言葉通りの投球。谷繁監督は「大野には大野の責任感がある。その責任感が投球に表れるようになった」とたたえた。チームは06年の5連勝以来、10年ぶりとなる東京ドーム4連勝。これからも大野は、声をからしながら腕を振る。【宮崎えり子】