投げては抜群の安定感、さらに「神ってる」打撃まで披露して大台に王手だ。広島黒田博樹投手(41)がヤクルト13回戦に先発し、7回1失点の好投で今季6勝目を挙げ、日米通算200勝にあと1勝とした。バットでも6回には満塁走者を一掃する適時二塁打を放った。チームは日本一になった84年以来、32年ぶりの11連勝を飾った。

 何度も修羅場をくぐり抜けてきた黒田が、10連勝でバトンを受けた重圧もはねのけた。「プレッシャーはいつもあります」と冷静にマウンドに上がり、7回を山田のソロによる1失点。打っては3点適時二塁打を放った。投打にわたる活躍で球団の連勝記録と自身の節目にダブル王手をかけた。

 時折小雨が降る肌寒い梅雨空の下でも、捕手からの返球を受け取ると投球間隔を置き、1球1球丁寧に投じた。制球良く球を低めに集め、内外角に投げ分けた。2回に昨季、20打数10安打1本塁打の山田に先制ソロで出はなをくじかれるも、すぐに切り替えた。打線の援護をもらうと、熟練の投球はさらにさえた。

 首のしびれ、右肩痛は完全に癒えたわけではないが、17日オリックス戦から中11日空いたことが幸いした。「その中でコンディションを整えて、いい状態で上がれた」。2日間はグラウンドに姿を見せず調整よりも体のケアを優先した。

 「神ってる」流れに乗り、本職ではないバットでも貢献した。3点リードの6回2死満塁。「1、2、3で初球いこうと思ったら、振ったところにボールがきてくれた」。ヤンキース時代のチームメートのロビンソン・カノ(マリナーズ)と同じ型の910グラム、34インチのバットで内角球を捉えた。今季27打席目の初安打は左中間を割る、走者一掃の3点適時二塁打。「2度とないと思います」と笑顔も会心だった。

 2試合ぶりの勝利で日米通算199勝。チームを32年ぶり11連勝に導いた。緒方監督は「今日は黒田に尽きるだろう。ナイスピッチングだった。それに尽きる」と絶賛。それでも黒田に安心した様子はない。「チーム状況も含めて、当然、通過点にしないといけないと思っています。自分の中でもひたっている時間はないと思っていますし、また201勝目、202勝目と積み重ねていかないとチームは上に上がっていけないと思う」。大記録の先にあるのは、25年ぶりの頂点だ。おとこ気右腕が「神ってる」広島の勢いを加速させた。【前原淳】

 ◆200勝メモ 黒田が日本で120勝目を挙げ、大リーグの79勝と合わせ日米通算200勝に王手。日本で200勝は08年山本昌(中日)まで24人が達成。過去に日米通算で記録した日本人選手は野茂だけ。野茂は日本で78勝、大リーグで123勝の通算201勝を挙げ、デビルレイズ時代の05年に日米通算200勝を達成した。00年以降、日米通算を含めて2000安打は24人達成しているのに対し、200勝は04年工藤(巨人)、野茂、山本昌の3人しかいない。