創部65年目のきらやか銀行(山形市)がパナソニック(門真市)を延長13回4-3で下し、初出場初勝利を挙げた。勝利目前の9回に先発のエース右腕・小島康明(23=東農大)が3安打を浴びるなど同点に追いつかれたが、タイブレークの延長13回1死満塁で主将の7番長谷川徹内野手(27=中央学院大)が勝ち越し犠飛を放った。山形県勢66年ぶり2度目の出場で初勝利を挙げ、21日の2回戦は西濃運輸(大垣市)と対戦する。

 2度追いつかれながらも、「赤い雑草軍団」が死闘を制した。タイブレーク延長13回裏1死満塁、補強の左腕西村祐太(27=JR東日本東北)が二ゴロ併殺に打ち取った瞬間、三塁側を真っ赤に染めたきらやか銀行応援団の拍手と歓声がはじけた。07年の銀行統合によるクラブチーム化を選手兼任で乗り越えた大向誠監督(45)は「あれがあったから、ここまで何とかやってこれた。勝った瞬間、熱いものが込み上げてきた」と興奮気味に振り返った。

 初出場ながら出場50回を誇る名門パナソニックに力負けしなかった。8回まで無失点だったエース小島が9回に追いつかれ、タイブレークまでもつれた13回表。V打となる右犠飛を放った長谷川は「全国で勝つのは難しかった。山形のみんなに良い報告ができてよかった」と胸をなで下ろした。2番手で4回1安打1失点の西村も「補強は初めてだったけど、開き直って投げられた」と胸を張った。

 応援でも圧倒した。相手を優に上回る約5000人が駆けつけた。企業チーム復帰に尽力した粟野学頭取(60)は背番号55のユニホームを着て声をからした。勝利の瞬間は握手攻めに合い「簡単に勝たせてくれない。これが東京ドーム。よくしのいでくれた」としゃがれ声で喜びを爆発させた。

 チーム消滅危機から一転、つかんだ全国1勝は格別だ。エース小島は感慨深げにいう。「自分たちはその時代を知らないけど、そこを乗り越えた監督に勝利をプレゼントできてよかった。次も与えられた場所で全力で投げます」。小島を始め、強豪企業から声がかからず、はるばる山形までやってきた選手がほとんどだ。「赤い雑草軍団」が初のひのき舞台で、きらやかに大輪の花を咲かせた。【高橋洋平】