阪神のドラフト1位候補に8日、地元大阪の剛腕高校生が急浮上した。履正社・寺島の甲子園デビューを阪神は和田豊SA(53)ら10人態勢で視察した。これまで即戦力の創価大・田中正義投手(4年)や、中京学院大・吉川尚輝内野手(4年)ら「ポスト鳥谷」級の野手に注目していた阪神だが、寺島が甲子園で藤浪クラスの力を発揮すれば「即戦力」と判断し、指名に踏み切る可能性もある。

 バックネット裏から虎スカウト陣の鋭い目が光った。視線の先は人生で初めて甲子園のマウンドに立った履正社・寺島だ。2安打11奪三振で1失点。全国から注目を浴びる左腕は甲子園デビュー戦を見事、完投で飾った。力強い投球フォーム、そして堂々としたマウンドさばき。和田SA、高野栄一球団本部長、佐野仙好統括スカウト…。集結した総勢10人の阪神関係者が、その一挙手一投足を追いかけた。

 密着を続ける畑山俊二統括スカウト補佐は当然といわんばかりの口ぶりだった。「初めての甲子園でもいつも通りだった。自信があるからバタバタすることがない。けん制にしてもバッティングにしても何をさせてもうまい」。個人的な感想としながら「誰が見ても」と、ドラフト1位級の逸材と評価した。その本気度がヒシヒシと伝わってくる。

 金本阪神2度目となる今秋ドラフトには明確な方針がある。補強ポイントは即戦力投手と、「ポスト鳥谷」と期待させる内野手。これまでも投手なら創価大・田中が中心。内野手なら中京学院大・吉川、日大・京田陽太、早大・石井一成ら内野手の名前が1位候補として挙がっていた。

 ただ、たとえ高校生であっても「即戦力」と判断すれば話は別だ。畑山統括スカウト補佐はチームの若き大黒柱を例に挙げた。「うちの藤浪みたいに甲子園で覚醒してほしいね」。大阪桐蔭を春夏連覇に導き「甲子園の申し子」と呼ばれた藤浪は、高卒1年目から10勝をマーク。確かに「即戦力」だった。寺島も甲子園大会で藤浪級に評価を上げれば、阪神のドラフト戦略に浮上してくる。

 この夏は横浜・藤平尚真、花咲徳栄・高橋昂也に寺島を加えた「高校BIG3」が注目される。阪神にとってはお膝元である大阪の逸材を放ってはおくことはできない。

 ◆寺島成輝(てらしま・なるき)1998年(平10)7月30日、大阪・高槻市生まれ。2歳で東京に引っ越し、国分寺第九小1年から軟式野球を始め、同3年から投手転向。大阪に戻り、日吉台小4年から硬式野球を始める。茨木東中3年夏に「箕面ボーイズ」で世界少年野球大会に出場し、優勝。183センチ、86キロ。左投げ左打ち。

 ◆12年藤浪のケース 春夏の甲子園優勝投手を阪神は早い段階からマーク。ドラフト直前には1位指名を明言。阪神、ヤクルト、ロッテ、オリックスの4球団の争奪戦となったが、和田監督(現SA)は2番目にクジを引き、交渉権をゲット。ドラフト1位の抽選は12連敗でストップした。