阪神がランディ・メッセンジャー投手(35)に2年契約を準備することが2日、分かった。チーム最多の12勝をマークした優良助っ人は2日、米国に帰国。来季が日本8年目で、順調なら「国内FA権」を取得することから、球団は流出阻止に先手を打つ。チーム愛の強いメッセンジャーも受諾が確実だ。FA権を取得した外国人選手は日本人選手扱いになるメリットもあり、9年目の18年シーズンに先行投資する。

 阪神が優良助っ人の流出阻止に乗り出す。チーム最多の12勝(11敗)で5度目の2桁勝利をマークした右腕は来季、8年目のシーズンを満了すれば、日本の野球協約に基づき「国内FA権」を取得する。来季への契約更新の方針を固めている球団は今後の交渉で2年契約を準備し、誠意を示すことが判明した。

 メッセンジャーとは今季で1年契約が切れる。メジャーが獲得への動きを見せた13年オフに2年契約を結んだ例はあるが、来季は36歳。推定年俸は3億円で、年齢的なことを考えれば2年先の18年シーズンまで保証する判断は難しい。だが2年連続3度目の開幕投手を務めて1年間ローテーションを守った右腕が来オフ、争奪戦に巻き込まれれば大変だ。これまでの実績から2年後も活躍すると見込み、複数年の先行投資でハートをつかむ作戦に出る。

 18年は「日本人扱い」になるメリットもある。FA権を取得した助っ人は、外国人枠を外れるためだ。今季は1軍で4つの外国人枠に縛られ、ドリスやマテオらの調子が良くても2軍暮らしを余儀なくされた時期もあった。メッセンジャーが日本人扱いになれば、合計5人の外国人が1軍に同時に在籍できる。かつて、日本人扱いとなったローズやカブレラを擁したオリックスが重量打線を組んだように、阪神のチーム編成、戦略にも多彩なバリエーションが増える。

 メッセンジャーも熱烈オファーは望むところで、合意は確実と見られる。12勝目を挙げた9月24日中日戦のヒーローインタビューで「タイガースファンの皆さん、愛しています! 来年はもっといい成績を残せるように頑張ります!」と残留と好成績を約束。関係者によると「大好きな阪神で引退する」覚悟があるという。

 助っ人右腕はこの日、家族とともに関西国際空港発の航空機で米国に帰国した。今季を振り返り「4位は残念で満足しているわけではない。でも決して悪いシーズンでもなかった」と総括。しばらくは体を休める予定だという。しばしの休息期間を経て、17年と18年に大活躍する戦闘ボディーを作り上げる。

 ◆フリーエージェント(FA)資格取得条件 出場選手登録日数が145日を満たしたシーズンが8年に達すると国内FA権、9年に達すると海外FA権を取得。145日に満たない場合は、すべて合算して145日に達したものを1年として計算する。ただし、08年以降に入団した大学・社会人出身の選手は7年で国内FA権を取得できる。

 ◆日本人扱い 野球協約第11章(選手数の制限)第82条(外国人選手)の中で、日本国籍を持たない外国人選手の例外について「選手契約締結以後、日本プロフェッショナル野球組織が定めるフリーエージェント資格を取得した者」とある。取得した翌年から外国人枠を外れる。

 ◆第1号は郭泰源 96年年に国内FA権を取得した郭泰源(西武)が適用第1号で、その後は04年ローズ(巨人)、08年ラミレス(巨人)、09年カブレラ(オリックス)、10年シコースキー(西武)、11年ミンチェ(許銘傑、西武)、11年フェルナンデス(西武)がいる(球団は当時の所属)。

 ◆FA権行使 11年のミンチェは、国内FA権を行使。12月12日にオリックスが獲得を発表。FA権を行使して移籍した初の外国人選手となった。当時、オリックスの村山球団本部長は「来年以降は日本人扱いになるのも獲得へ動く決め手になった」と語った。