慶大が1-0で早大を破って勝ち点4とし、2位を決めた。広島1位指名の加藤拓也投手(4年=慶応)が最速150キロをマークし2安打完封。6回に岩見雅紀外野手(3年=比叡山)の本塁打で挙げた1点を守った。加藤拓は現役最多の通算26勝(今季6勝)。首位打者は4割7分5厘の慶大・山本瑛大一塁手(4年=米サウストーランス高)が、最優秀防御率は早大・小島和哉投手(2年=浦和学院)が1・60で、ともに初受賞した。

 慶大入学と同時に来日した帰国子女が、“引退試合”に花を添えた。山本瑛は6回、124キロの変化球を運んだ。首位打者を決定づける2打席連続ヒット。今秋開幕から12試合連続、春の立大2回戦から16試合連続安打で締めた。ベストナインとのダブル受賞も「早稲田に勝てたことの方がうれしい」と、宿敵からの勝ち点奪取を喜んだ。

 初の日本での生活は、苦労の連続だった。両親に「日本の文化を勉強してこい」と背中を押されて慶大を受験し、合格。米カリフォルニア州在住時も「日本人なのに日本語が話せなくなるから」と自宅では日本語での会話だったが“言葉の壁”にぶち当たった。「敬語が分からなくて、先輩にタメ口を使ってしまっていた」と振り返る。

 一日中の練習も、野球部独特の上下関係も初体験。「漢字も読めないから、先輩の出身高校を覚えるのは大変だった」。1年を通じて温暖だった故郷とは異なる日本の四季にも戸惑い、体調を崩すこともあった。境遇を理解してくれた仲間の支えもあって、リーグ屈指の巧打者に成長した。

 大学4年での「現役引退」は、入学時から決めていた。進路は未定だが「今も日本語に自信はない(笑い)。アメリカに戻って、大リーグのチームに携わる仕事がしたい」と言った。輝かしい成績を残した山本瑛は、バットを置いて新たな夢へ向かう。【鹿野雄太】

 ◆山本瑛大(やまもと・あきひろ)1994年(平6)3月31日、米カリフォルニア州生まれ。リビエラ小1年から野球を始める。ポジションは主に投手。リチャードソン中ではポニーリーグのチームに所属。サウストーランス高から慶大に入学し、野手に転向。2年春からリーグ戦出場。180センチ、84キロ。右投げ右打ち。好きな選手はトラウト(エンゼルス)。家族は両親。