広島の黒田博樹投手(41)が5日、広島市のマツダスタジアムで行われた優勝報告会の中の引退セレモニーで、マウンドに別れを告げた。

 全選手との握手、抱擁を終えると、マウンド前に膝を突いた。感謝の気持ちも込めて約30秒間。最後の最後で感極まり、目元に手を当てた。ベンチ裏に引き揚げ、報道陣の質問を受けても1分間は沈黙。ようやく震える言葉を絞り出した。

 「いろんな苦しい思いをしたので。あのマウンドに立ってスタンドを見るのも最後と思うと、苦しいこととかいろいろなことを思い出した。マウンドに上がらなくていいという気持ちと、上がれないという気持ち。本当に一瞬だけど、いろんな過去の試合とかが頭をよぎった」

 セレモニーでは、最後のユニホーム姿でグラウンドを一周し、サインボールを次々とスタンドに投げ込んだ。そして当初は断っていたが、チームメートらの手で胴上げされた。永久欠番となった背番号と同じ15回、宙に舞った。

 「世界一のカープファンの前でユニホームを脱ぐことができ、最高の引き際だと思う」と3万810人のファンにあいさつした右腕。「やっぱり寂しい部分はある」と率直な気持ちを口にしつつ、感動と感謝の思いに包まれた本拠地で栄光のユニホームを脱いだ。