世界のホームラン王の「1本足打法」は健在だった。「台湾OB選抜-巨人OB選抜 チャリティー試合」で、ソフトバンク会長で巨人OB会顧問の王貞治氏(76)が7回表無死に代打で登場した。

 一塁ベンチ前に現れた「背番号1」に球場の全視線が注がれた。ファンは総立ちで拍手を送り、両軍ナインがベンチ前に整列。王氏はゆっくり足場をならして左打席に入り、ピンと背筋を伸ばした。マウンドには元西武の郭泰源氏が上がり、捕手は元巨人の呂明賜氏。郭氏が投球動作に入ると、スッと右足を上げた。

 わき起こった6500人の大歓声に、通算868本塁打の血が騒いだ。「ユニホームを着ると年は取ってもその気になってしまう。若返るというかね」。カウント2-2からの94キロ直球はバックネットへのファウルとなったが、勢い余って前に倒れ込むほどのフルスイングだった。最後は空振り三振も、この日一番の拍手が待っていた。試合は15-11で巨人が勝利。「巨人のユニホームは特別で緊張感がありました。あそこ(打席)に立つ気分は特別なものがありますね。結果はともかく、思ったより動けた」とほほ笑んだ。

 日本と台湾の野球を盛り上げたい一心だった。「台湾の野球も盛り上がって、もっと日本と交流試合やって、世界的なレベルにお互いになれるようにね」。1968年に春季キャンプで訪れて以来となった台中での打席。「スイングそのものよりボールが見えないからね」と苦笑いしつつ、全力プレーで野球の魅力を伝えた。来年はWBCが控える。「ワンステップずつ上がって気持ちが盛り上がっていくのが大事。良い刺激になったんじゃないですか」と、両チームの躍進を願った。【浜本卓也】