猛虎史上、最高のサクセスストーリーだ。阪神原口文仁捕手(24)が29日、兵庫・西宮市の球団事務所で契約更改交渉に臨み、今春の育成時代の480万円から、1720万円増の2200万円でサイン。アップ率358%(4・58倍)は07年オフ桜井広大の346%(4・46倍)を抜き、日本人では球団史上最高の上げ幅になった。育成からはい上がった男が来季は不動のレギュラーを狙う。(金額は推定)

 掛布も新庄も超えた。原口が虎の歴代スターを上回るアップ率をたたき出した。今春の育成時代の480万円から、約4・5倍、358%増となる2200万円に大昇給。だが、青いスーツで決めた主役は、なかなか笑顔を見せなかった。

 原口 途中から出てきて、よく1年間、頑張ってくれたというのと、来年もさらに頑張ってほしいと言われました。(上げ幅は)少し、です。(満足度は)ボチボチという感じです。

 阪神では08年オフ、育成契約から成り上がったバルディリスが300万円から約6・3倍、533%増の1900万円を勝ち取った例があるが、日本人では球団最高のアップ率。だが、喜びはグッと押し込めた。

 09年ドラフト6位で帝京から入団。だが腰痛など、度重なる故障で12年オフに育成契約。その後もケガに泣き、今春のキャンプでは背番号124を背負っていた。だが金本監督らに打力を認められ、4月27日に4季ぶりに支配下登録されると、即1軍昇格。年俸も480万円だった育成契約をあらため、500万円で支配下契約を結び直した。

 27日当日の巨人戦(甲子園)は、急な事態で94番の輝流デザインユニホームが間に合わず、山田2軍バッテリーコーチのものを借りて着用。原口はその日を境にまばゆい輝きを放った。

 原口 いろんなスタッフの方にお世話になって、いいタイミングで1軍に上げていただいたので、いい勢いでやれた。初めて出た試合はすごく印象にありますし、頭が真っ白の中で何も分からず無我夢中でした。

 若手を積極起用するチームの波にも乗り、5月月間MVPを獲得。球宴出場とシンデレラストーリーを地でいった。もちろん1年限りの活躍では意味がない。

 原口 一塁をしていて、一塁の準備をしていて捕手はできない。しっかり捕手の準備をして、一塁に行けと言われたときに行けるようにしたいと思います。

 金本監督も「バッティングは、ちょっと違うわ」と認める若虎NO・1の打力を誇る。あとは守り。捕手と一塁両にらみの来季へ向け、バラ色のオフに浮かれず鍛錬を積む。【桝井聡】