プレーバック日刊スポーツ! 過去の2月4日付紙面を振り返ります。2012年の1面(東京版)はDeNA中畑清監督でした。

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 インフルエンザに感染して「隔離」されたDeNA中畑清監督(58)が、球場に隣接する宿舎12階の自室から、選手の状態をチェックした。沖縄・宜野湾キャンプ3日目の3日、静養することになった同監督は練習開始前にはバルコニーから、ナインに向かって手を振って復活をアピール。直接声はかけられないが、練習の様子をチェックしたり、若手の打撃をビデオ撮影するよう指示を出すなど、自室で監督業を継続した。順調に回復すれば第1クール最終日の5日に復帰する予定だ。

 地上約40メートル。宜野湾市立野球場の全体が見渡せるホテル12階の自室から、中畑監督が元気な姿を見せた。黒のジャージー姿にマスクはなし。右手で携帯電話を耳に当てながら、左手を大きく振った。練習開始前の円陣を組んでいた選手からは、大きな歓声。インフルエンザへの感染が発覚してから、わずか半日での復活アピールだった。

 バルコニーへの登場は、代わりに指揮を執った高木ヘッドコーチの計らいだった。「選手も盛り上がるかなと思って。監督には無理をさせて申し訳なかったけどね。選手が集まったから顔出してってね」。携帯電話で連絡すると、最初は窓越しに手を上げた中畑監督。しかし、「出てこないと分からないって、言ったんだよ」(高木ヘッドコーチ)と促されると、遠慮しながらも、笑顔で登場した。

 この日の朝には36度5分まで熱が下がった監督が、これだけで済むはずがない。ノックが始まると、窓辺の椅子に座って約30分間、練習を見守った。部屋からグラウンドまでは直線距離で約200メートル。背番号など見えないはずだが、いつもの熱視線で、どの選手がどんな動きをしているか、チェックできたという。

 若手の打撃も気になった。正午ごろには球団関係者に、フリー打撃のビデオ撮影もオーダーした。マウンドの後方に三脚で固定したカメラを配置。そこから、筒香、荒波、黒羽根、内藤らの打撃を撮影させた。キャンプ初日、2日はケージ裏からだけではなく、遊撃の位置からもフリー打撃を見守った。打者のフォーム全体を正面から確認できる、この位置に近い場所からの映像を、画像サイズも指定してリクエストした。

 1月15日から2日間、宜野湾を視察に訪れた際、一番驚いていたのは、球場とホテルの近さだった。「これだけ近いのはいいね。選手はどんなにバテても、歩いて帰って来れるな」。インフルエンザによる「隔離」という予期せぬ事態に直面したが、そのメリットを生かした形となった。

 夜には、球団広報を通じて「非常にバランスのよい練習だったと思う。投手も内野手も非常に集中力を保ったまま、練習できていたと思う。今日は特に、日頃とは違う目線で、ホテルの上から練習を見渡すことができた。本球場、サブグラウンド、全てを使って非常に効率の良い練習ができていた。上から見ていて気持ちよかった」とコメント。食欲も戻って、元気も取り戻した。「このままずーっと見ちゃおうかな」と、キヨシ節も完全復活。今日4日に医師の許可をもらえれば、5日に熱い男がグラウンドに帰ってくる。

※記録と表記は当時のもの