西武大石達也投手(28)が見事な火消しで、チームを今季初の逆転勝利に導いた。

 チームが4-3と試合をひっくり返した直後の4回裏。先発多和田が無死一、二塁とピンチを広げたところで登板。第1打席でも先制2ランを放っている絶好調の楽天ペゲーロとの対戦になった。

 「ピンチが広がれば登板とは言われていた。次のウィーラーあたりと思っていたのですが、準備はできていました」。落ち着いて二ゴロ併殺に打ち取ると、ウィーラーも三振に切って取り、絶体絶命の危機を無失点で乗り切ってみせた。

 試合の行方を決めた好投に、辻監督も「見事のひと言」と激賞。イニングをまたいだ5回も無失点で抑え、武隈、牧田、シュリッター、小石と小刻みなリレーでの逃げ切り勝利につなげた。

 右肩痛で14、15年とほとんど登板できなかった。それを乗り越え、昨季36試合に登板し、復活を果たした。しかし、かつては150キロ前後のスピードを誇った直球が、この日は140キロに満たないほどになった。

 それでも、首位楽天の強力打線を、直球でぐいぐいと押しこみ続けた。実は同僚の武隈とともに、4シームのストレートのバックスピン量が、パ・リーグで5本の指に入るほど多い。そのため、打者の目には手元でグイッと伸びてくるように映り、思うようなスイングをさせない。

 数字上は遅いが、打たれない。西武ファンの間では「謎ストレート」とも呼ばれる伸びのある直球と、鋭く落ちるフォークの相乗効果で、大石は新しい投球スタイルを確立した。辻監督のもとで躍進を目指すチームにあって、この日のように試合を分ける重要な局面でのマウンドを担う。