楽天の1番茂木栄五郎内野手(23)が、開幕28試合目で早くも昨季に並ぶ7号ソロ本塁打を放った。9日のロッテ戦。6点を追う7回1死から豪快に右翼席中段まで運んだ。7本塁打はチームではカルロス・ペゲーロ外野手(30)の8本に次ぎ、日本人では最多。打率も3割1分4厘と好調をキープする。4-6と敗戦の中で、入団2年目のリードオフマンが楽天の顔になりつつある。

 反省をすかさず生かした。4回2死満塁。1ストライクから速球に差し込まれて二ゴロに凡退していた。茂木が言った。「前の打席でチャンスで1本出ていれば。変化球が頭にあって」。次の打席の7回は、追い込まれるまでストレート狙いと頭の中で整理した。「強いスイングをしようと打席に入ったのが、いい結果になった」。1ボールから内角高めの速球を捉えた。打った瞬間、本塁打と分かった。

 昨年、プロ1号は5月11日。今年は5月9日にルーキーイヤーの7本塁打に早くも並んだ。梨田監督は「15本ぐらい打ってほしい」と期待するが、茂木は「個人的にホームランの数は気にしていない。去年に並んだな、という感じ」とこだわりはない。それでもペゲーロとの1、2番コンビで計15本。楽天が首位を走る大きな原動力だ。

 茂木が3位指名された15年秋のドラフト。楽天は仙台育英の平沢を1位指名した。競合したロッテとのくじに外れ、外野手のオコエを1位にした。仮に平沢との交渉権を獲得すれば2位で同じ内野手の吉持、3位は投手指名が濃厚だった。そうなれば茂木の入団は実現しなかった。超高校級遊撃手を取り損ねたことが、今となっては楽天には“当たりくじ”となった。

 くしくも開幕から1軍の平沢はこの日、今季初、プロ2度目のマルチ安打に2得点とロッテの勝利に貢献した。茂木も負けじと本塁打を放ったが「映像を見たらいいスイングじゃない。ちょっとバットが外から出ていた」と謙虚で、向上心を忘れない。ドラフトで運命を分けた2人が同一ゲームでそろって活躍。杜(もり)の都で、ひと味違う野球の面白さがあった。【久野朗】