西武野上亮磨投手(29)が後輩に手本を示した。得点圏に走者を背負いながらも決定打を許さない粘投で、6回6安打無失点の4勝目。チームを今季最多の貯金6に導いた。年に1回の群馬開催試合。地元ファンだけでなく、同県沼田市出身の高橋光成投手(20)に、チームを勝利に導く手本のような投球をみせた。

 調子が悪くてもホームだけは踏ませなかった。打線が1点を先制した直後の2回1死二、三塁。野上は石井一を7球目のチェンジアップで空振り三振に切り、続く清水は木村文の好捕で右飛に仕留めた。「(2回は)三振が欲しい場面で取れたのが大きかった。調子はよくない中で何とか踏ん張れた。今日も野手に助けられました」と感謝した。

 3回を除き、毎回得点圏に走者を背負う苦しい投球。「1発と四球を出さないように。とにかく低めに投げれば何とかなる、と言い聞かせていた」。カウントを不利にしても慌てない。単発の安打はOKと割り切って腕を振り、6回まで最小得点差を守りきった。

 後輩の故郷でぶざまな姿は見せられなかった。この日は、オフに熊本で合同自主トレを行った高橋光の地元・群馬でのゲーム。「(高橋光に)やってもらわないとチームも強くならない。頑張る姿は僕にも刺激になる。だからこそ、変な投球は見せられなかった」。ここまで2勝4敗と精彩を欠く後輩右腕。先輩として、チームを勝たせる投球をみせる覚悟を秘めていた。

 投球以外でもエール? を送っていた。限定販売された高橋光の似顔絵Tシャツは野上が描いたもの。「絵は得意ではないが、本人に頼まれたんで描きましたよ。左の眉毛のほくろがポイントです」と笑った。お立ち台では「高橋光成のために頑張りました!」と叫び、大歓声を浴びた。

 高橋光は昨年、初の地元凱旋(がいせん)登板となったロッテ戦で6回途中7失点。5回までの4点リードを守れず、黒星を喫した。「今日の野上さんの投球は、あらためて勉強になりました。自分も勝ちに貢献する投球をしないといけない」と決意を新たにした。たとえ不調でも、勝利に導くのがローテーション投手の役目。野上の投じた93球は、後輩の胸に確かに届いていた。【佐竹実】